ミイラの飼い方 第4巻

著:空木かける 先生

昔空くんが他月にミーくん達のような
種族について教えてくれた時のこと。

「この子達は空想上の生き物だから
本当にいるって知られると大騒ぎに
なっちゃうんだよ。そうしたらテレビ
で放送されてみんなを捕まえようと
する人が出てきちゃうんだ。」

人間から隠れて暮らしている理由を
空くんはそう教えてくれていた。
でもそれだけではないことを、幼い
他月は身をもって実感することになる。

初めてドラゴンを見つけたその時、
ドラゴンは『そういう人間』から逃げて
他月に助けを求めてきたんだろう。

この種族が口コミで共有している情報は、
『姿を見せていい人間』『絶対に姿を
見せてはいけない人間』だったようだ。

その時の詳細はまだ明かされていないけど
他月はその時腕に大きな傷を負い、空くん
の所までドラゴンを見せにはいけなかった。
とても怖い何かがその時あったのだろう。

どの程度話したかはわからないけど、その
時の話も多分カエデさんにしたんだろう。

空くんに話せない何かに関してはきっと
カエデさんにも話していなそうだけど、
コレクターに関する話自体、今までは
ずっと1人で抱えていたのかもしれない。

カエデさんに話したことで、真剣
に向き合ってくれる彼女の存在で
他月はどれだけ救われただろう。

コレクターという存在‥中には
冒険家と詐称する者もいるとか。

空父・モクレンさんも自称冒険家
だそうだけど、彼がコレクター
だということはないだろう。

妹のカエデさんにコレクターの
知識があり、それらからミーくん
達を守ろうとしているのだから、
有効的な付き合いをしている兄が
コレクターだとは考えにくい。

モクレンさんの説明はまだしばらく
出てこなそうだけど、彼が冒険家と
称して何をしているのか、空くんは
何も知らないから‥父に関して何も
知らないままコレクターに関してだけ
知ってしまうのはできれば避けたい。

根拠もなしに父親を疑うようなことは
空くんはしないだろうけどね、むしろ
簡単に信じすぎてしまうくらいだから。

コレクターという存在が、このお話の
中で1番大きな闇ではないだろうか。

話しておきたかったことと、周囲の
見回りを終えると他月はカエデさんと
柏木家に戻った。モギちゃんとこの
ドラゴンの食べる物の確認も済んで
(納豆と豆腐等健康的なモノ好み 笑)
モギちゃんが帰ろうとしたその時‥

「そういえばドラゴンのことだが、
昔コイツの親父から聞いたことが
あるがドラゴンは日光に弱いらしい。」

他月はモギちゃんに嘘の情報を教えた。
これは周囲に見られることのないように、
コレクターから存在を隠すためだろう。

コレクターに見つかれば、ドラゴン
はもちろんモギちゃんも危ない目に
遭ってしまうかもしれないのだから。

ここまで言う理由が今の空くんには
わからなかった‥それでも他月の言葉
に何も聞かずに合わせようとする。

もともと空くん人を疑わなすぎる所が
あるけど、今回はそれ以上に他月に対し
絶対的な信頼があってのことだろうね。
ほんと‥この2人のこういうとこ好き。

こう言っておけば、モギちゃんとっても
素直だから危険なことにはならないはず。

ところでドラゴンの名前が決まった。

「名前はもう決まってるんだ。
ペットが来たらずっとつけた
かった名前があって…いさお。」

… ドラゴンは今日からいさおになった。
想定外のネーミングに、紅茶を飲んでいた
他月とカエデさんが盛大に吹き出した 笑

ミーくんは大好きな空くんの役に
立ちたいだけなのかもしれない。

お風呂掃除を手伝おうとして盛大に
滑って転んで壁に激突してしまったり、
空くんがすぐに電話に出られない時に
電話に出ようと受話器を外したり‥

人間語は喋れず、唯一発することが
出来るのが「わんっ」なので犬だと
勘違いされたミーくんでした 笑

頑張るんだけどどうもから回って
失敗ばかりしてしまってる様子。

そんな話を他月やカエデさんと
していたのをミーくんは聞いてて‥

「ミィは本当にお兄ちゃんと
いう感じがしないよな。面倒
見るより見られる側だろうし。」

その後可愛がられるタイプだな‥と
決して悪い意味ではなかったんだけど
もうすでに聞こえていないミーくんは
酷く落ち込んでしまったようだった。

その理由には全然気づけない空くん。
でもその後、ミーくんは居眠りしながら
盛大にくしゃみをしたコニーに布団の
代わりにティッシュをかけてあげた。

ミーくんの悩みには気づけなかった
空くんだけど、結果的に成長してると
気付いてミーくんは褒められることに。

今度は褒められてる理由に気づかない
ミーくんだったけど、きっとこうやって
お互いに成長してくんだろうと思った。

空くんは、年頃の子なら恥ずかしくて
言えないようなことをサラッと口にする。

「モギちゃん今日いつもと
髪ゴムが違うんだね。すげー
似合ってるじゃん、可愛いよ。」

年頃の男の子、きっとこういうこと
サラッと言えないと思うんだよ 笑

これはカエデさんや他月相手にもよく
発動するやつで‥長い付き合いになる
他月にはコイツに『恥ずかしい』って
気持ちはあるのかと思われてしまう程 笑

でもよかった、ちゃんとあったよ 笑
彼の恥じらいポイントがほんと謎だけど
しゃっくりが恥ずかしくて顔を真っ赤に
する空くんが可愛くて‥反則だわこの顔。

空くんのことが大好きすぎる私は
悶え死にしそうになりましたよ 笑

この後ミーくんの捨て身の作戦に驚き
焦りすぎてしゃっくりは止まりました。
どんな作戦かはぜひ読んでみて下さい 笑

ある時、庭で猫に襲われそうになって
いるスズメを見つけ保護した空くん。
弱っていて飛べない状態のようだ。

弱った動物を元気になるまで保護し世話
することは、昔からよくしていたようだ。
でも結局助けられずにその度に悲しそうに
する空くんをずっと見てきた他月にしたら
‥きっともうしてほしくないことだった。

他月は空くんが悲しむのをこれ以上
見たくはなかっただろうから。

今回もそんな彼に対して、心では反対
したい思いもあったろうに、他月は役に
立ちそうなことを調べて空くんに伝えた。
出来る範囲で手助けすることを選んだ。

保護してから少し経った頃、朝起きると
スズメはぐったりしてしまっていた。
少し前までは元気そうだったのになんで
と不安になっていた時‥コニーに貰った
薬草を思い出し与えてみると‥復活!! 笑

なんだかよくわからないけど、コニーの
薬草のおかげでスズメは元気になった。
それでも中々飛ぼうとしない日々が続く‥

長く柏木家にいて、ミーくん
ともすっかり仲良くなっていて
『チュン』と名前をつけた。

そんなある日、窓を開けて他月と話す。

「やっぱりちゃんと外に帰ってほしいから
出来る限りのことはしてあげたいし…。」

チュンの話だ。このまま飛べなそうなら
病院に連れて行ってみようという話を
した時、チュンが突然飛び‥そのまま
窓の外へ飛び立っていってしまった。

突然のことでサヨナラも言えなかった
けど今度はちゃんと助けられた、再び空を
飛ばせてあげることができたって空くんは
少し切なそうに、でも嬉しそうに笑った。

後日‥チュンはまた柏木家のベランダに
飛んできて空くんの手にすり寄ってきた。
もしかしたらチュンは、空くん達のそばに
いたくて中々飛び立たなかったのかもね。

きっとこれからはまた気まぐれに2人に
会いに顔を出してくれるだろう。

「絵本読んであげてるうちに
自分で覚えたみたいなんだ。」

気がつくと文字を覚えていたいさお。
そんないさおがミーくんやコニーにも
文字を教えて手紙を書いてきてくれた。

ミーくんが空くんにくれたお手紙には

「ずっといっしょ」

と書いてあってとんでもなく幸せそうな
空くんだったけどコニーのお手紙はそんな
わかりやすいものではなかったようだ。

「どうおもう?」

……………?? 笑

「さぁ?」

このなんとも言えない質問に対して、
他月は曖昧な答えを返しただけだった。

でもそのうち、他月がこの質問に
はっきりと答えを出すことになる。

どう思う?とは何をなんだろう。
自分のことを?いろいろ謎だけど
コニーが望む答えを受け取れる日が
早く来たらいいなと願っています 笑

ある日モクレンさんから荷物が届いた。
小さめの箱を見て空くんは息を呑んだ。

過去にそれくらいの小さい箱に
入って届いた恐怖の『頭割り
人形』の記憶があったから。

いろいろ準備して箱を開けたは
いいけど、中身はミーくんの故郷
エジプトの砂だった。それも、
変な砂ではなく普通の、ただの砂。

それに、これまでは三ヶ月もすれば
他の国に旅立っていたというモクレン
さんは今もまだエジプトにいるようで、
空くんはエジプトが気に入ったのかな
なんて考えていたんだけど、カエデさん
と他月は違うことを思ったみたい。

最初は砂に入って楽しそうにしていた
ミーくんだったけど、途中で震えながら
涙を流しているのを他月は見てしまう。
それはどう見ても嬉し泣きではなかった。

いさおがやってきたあの日、他月とカエデ
さんが話した内容にはある仮説があった。
ミーくんがやってきた理由について。

その時はまだ仮説でしかなかったけど、
今となってはほぼ確実なのだと思う。

コレクターから逃げて日本にきた。
だからエジプトに帰ることが出来ない。

(『帰りたがらない』じゃなく
『帰れない』だったのか。だから
あの人はミィのために砂を…。)

ミーくんの気持ちを察してしまう他月。

「俺がもう少し大人になったら
一緒にエジプト旅行行こっか!」

そんなことは知らない空くんは、
無邪気にそんなことを提案する。

他月はそんな言葉にちょっとヒヤッと
したみたいだったけど、ミーくんは
少し間をあけて嬉しそうに頷いた。

きっとエジプトに帰りたい気持ちも
ある。帰ることが出来ない怖い場所
でもある。それでも空くんと一緒に
なら行きたいと思えるくらいには
気持ちに変化があったのかも。

真実はまだわからない。ミーくんが
どれほどのことを抱えているのか。
他月が隠していることは何なのか。

それぞれが抱え隠している闇が、いつか
キレイに消えてくれたらいいと思った。

~ひとこと~

ミイラの飼い方4巻でした~!!
今回はがっつりこの世界の裏側というか、
闇部分に足を踏み入れた感じで‥ちょっと
不安な気持ちになることが増えた巻でした。

そういう内容を書きたかったので、
本当はもっともっとミーくん達の
可愛くて仕方ないお話もたくさん
あったんですけどそういう部分は
省いてしまいました勿体無い 笑

ほんと、一話一話可愛らしい話だったり
小さな伏線がぎっしり詰め込まれてるので
ぜひぜひ全部読んで頂きたいところです。

空くんやモギちゃんが可愛すぎる
ミーくんやいさおに対し『……ッ…♡』
となってしまうエピソードが盛り沢山 !!

興味持って頂けたらまた5巻も
よろしくおねがいします ☆