著者
原作:日向夏 先生
作画:ねこクラゲ 先生

これまでの物語から、よく
知りもしないのに羅漢に対し
嫌悪感のようなものを抱いてた。
でも事実とそこにあった真実は
決して同じではなくて‥羅漢にも
抱える思いがあったのだと知った。
ここで明かされた羅漢の過去を
かいつまんでですが紹介します。
まず、生まれた頃からずっと羅漢は
人の顔の区別がつかなかったらしい。
乳母と母どころか男女の区別
さえつかないような状態だ。
そんな理由で名家に長男でありながら
期待されるでもなく、父や母に愛情を
注がれて育てられることもなかった。
そんな彼は一人碁と象棋に
のめり込み奔放に生きていた。
そんな時に
「顔ではなく声や素振り、体格で人を
覚えるんだよ。何かに当てはめて
もいいね。お前なら象棋かな。」
そう言ってくれたのは羅漢の唯一の
理解者である優秀な叔父だった。
前々から羅漢視点だと人の顔が駒の
ように描かれていたのは、この叔父の
教えにより羅漢がある程度は人を区別
できるようになったということだろう。
大人になり、付き合いで行った妓楼で
鳳仙(フォンシェン)という妓女と会う。
彼女は妓楼で負けなしと噂の女で軍部で
負けなしの羅漢と碁の勝負をすることに。
圧倒的に敗北したのは羅漢の方だった。
羅漢が顔を区別できない理由は謎だが
この時彼女の顔はしっかり認識していた。
軍師として仕事はできているし、碁や
象棋をするのは楽しかっただろうけど、
これまで人を一人の人として認識する
ことはずっとできないままだったろう。
そんな彼が彼女と出会ったことで、
初めて一人の女性として認識する
ことができたのかもしれないね。

鳳仙との勝負をきっかけにして、
そこから何年かひたすら碁と象棋を
繰り返すだけの逢瀬が続いていた。
次第に鳳仙の値も釣り上がり三ヶ月に
一度会うのがやっとになっていた頃、
鳳仙の身請け話が出ていることを知る。
名家の長男とはいえ家を継いだのは
従母弟で、そんな自分が太刀打ちできる
ような金額ではなくなってしまってた。
この頃にはもう、すっかり鳳仙の
ことが好きになっていたんだろう。
おそらく鳳仙も羅漢に惹かれていた。
「あなたが勝てたら好きなものを
与えましょう。私が勝てたら好きな
ものをいただきましょう。」
そんなある日、こんな賭けを
提案してきたのは鳳仙だった。
でもこの試合は最後まで続けられる
ことはなく‥互いにこのままでは
終わってしまうと気づいていたから
こんな手段を選んでしまったのかな。
それがしてはいけないことだとしても
互いに欲しくて堪らなかったのかな。
他の誰かになんて渡したくなかった、
他の誰かのものになりたくなかった。
前に猫猫や壬氏様と話していたことで
妓女の価値を下げる方法‥なんて言ってた
けど、その時の2人の行為には確かに愛
とか恋とかお互いに気持ちがあったんだ。
でも問題はその先、優秀だった叔父の
失脚、叔父と仲の良かった羅漢には
遊説が命じられ羅漢はしばらくの間
各地を回らなければいけなくなった。
半年ほどで戻るからと妓楼に文を送った
ものの、結局帰ってこられたのは3年後。
3年という月日は鳳仙を壊れさせてしまう
には十分すぎる時間だったんだろう。

帰ってきた羅漢の自室には赤黒い
シミが付いた文と巾着‥中に入って
いたのは大人と子供の小指だった。
あんな形で身請けを破断にして
しまい信用も値も落ちて‥彼女が
その後どんなめにあったかなんて
想像するだけでも悲惨だったろう。
そんな大変な時期に想い人は
そばにおらず連絡をとる術もない
状況で鳳仙は次第に追い詰められ
狂っていったんじゃないかな。
彼女が生きているのか亡くなって
しまったのかさえわからない中、
あの指の子供の生存を信じてか
何度も羅漢は緑青館の門を叩き、
そのたびにやり手婆に殴られた。
そんなある時、緑青館のそばで
顔を認識できる幼い娘を見つけた。
と同時に、消息不明となっていた
叔父を発見することにもなる。
羅漢の叔父とは‥これまで猫猫を
育ててきたおやじ、羅門だった。
(残った娘と共にいたい。
ただそれだけが願いだった。)
何もかも失ってしまったと感じて
いた時に出会ったのは、鳳仙と
同じように顔を認識できる娘で、
それが我が子なのだとわかれば
そりゃ‥執着もするだろうな。
してしまったことが許されないという
のを踏まえても、なんだか不運が重なりに
重なってしまっただけのように思えて‥
羅漢という男に対する嫌悪感は薄まった。
プライドやそんなもののために意図的
に罪を犯したわけでもない、ただ一人の
女性を愛しただけだったんだなって。

今や三姫の一人となった梅梅だが
昔は鳳仙の下で禿をしていた。
10年かけて賠償金を払い終えた羅漢を
部屋に入れてくれたのは梅梅で、今は
唯一緑青館で相手をしてくれる妓女だ。
過去に2人の禿としてそばにいたのに
2人を止められなかったことに罪悪感を
感じて何かと気遣ってくれてるのかも
と羅漢は思っているようだったけど、
きっとそれだけではなかっただろう。
酔いつぶれていた羅漢が目を
覚ますとそこは緑青館だった。
今から身請けする妓女を選ぶ。
でも羅漢の目にはどれも変わらない
着飾っただけの碁石でしかなく、
鳳仙と出会った時のような衝撃を
味わうことはもうないと考えた。
(それならば良くしてくれた梅梅に
報いてもいいのかもしれない。)
そう思って梅梅の手を取ろうとした時
「羅漢さま、私とて妓女の矜持は
持ち合わせています。お望みでしたら
なんお躊躇いもございません。ですが
選ぶならちゃんと選んでくださいね。」
そう言って、梅梅は窓を開けた。
外から聞こえた覚えのある歌声に
羅漢は走り出し‥やってきたのは
離れにある鼻のない女の所だった。
鼻もなく、顔や体も随分傷んでいて
少々ホラーな見た目だった彼女、
やっぱり鳳仙だったんだね‥
やっぱり猫の母親だったんだね。
「婆、十万でも二十万でも
いくらでもいい。この女で頼む。」
羅漢には、こんなに美しく見えるのね。
病に侵されきっと長くは生きられない
と思うけど、それでもまた再会できた。
羅漢にとってはどれだけ金を払ってでも
手に入れたい代わりなどない存在だろう。
梅梅はきっと、羅漢のことが好き
だったんじゃないかなって思う。
自分を選ぼうとしてくれたことは
嬉しかったろうけど、そこに気持ち
などないとわかってしまったから、
あえて鳳仙の居場所を知らせるような
ことをしたんじゃないかって思った。
身請けという話を聞いた時つい白鈴の
ことかなんて考えて勝手に困惑した
私だったけど‥全くもって違ったね 笑
どちらかというと梅梅を、という
つもりだったか‥または鳳仙を
見つけることも視野に入れてたか。
猫猫がどこまで考えて出した条件
だったかわからないけど、今回は
心の底からよかったなと思えた。
梅梅はちょっと可哀相だったけど、
かっこよかった、いつかまた想いを
寄せる相手ができることを、その人
が身請けしてくれる未来を願うよ。

おそらく羅漢についての真実を猫猫は
ある程度は知っているんだと思う。
それでもあんなふうに拒絶反応を
起こすような嫌い方をする理由は、
1つは第一印象が恐ろしすぎたこと。
羅漢目線の描写では、猫猫に対して
すがるような視線を送っているように
見えたため恐怖を感じなかったけど、
彼の想いも何があったかも知らない
猫猫からしたら、やり手婆に殴られ
血まみれになった男がへらへら笑い
ながら近寄ってくる‥恐怖しかない。
こんなことを言ったら猫猫に嫌がられ
そうだけど、好きなものに対して興奮
してる時に見せる猫猫の笑顔と羅漢の
あのへらへら顔‥そっくりだと思う 笑
理由のもう1つは羅漢の才能への嫉妬。
中祀の時、結果的に羅漢に助けられて
猫猫はあの事件から壬氏様を守った。
猫猫はたくさん調べごとをして情報を
まとめた結果事件を予測してあの場に
かけつけたけれど、羅漢があの場にいた
のは何かありそうだという勘で様子を
見に傍まで来ていた程度だったのかも。
それ以外にも、もしかしたらこれまで
何度も助けられているかもしれない。
尊敬するおやじが手放しで才能を褒めてた
というのも猫猫にとって大きい理由だろう。
嫉妬するほどの才能、第一印象の恐怖、
あとは過去のことも勿論あるだろうね。
羅漢自身嫌われても仕方がないって
思ってるようだったし、猫猫も嫌い
ならそれはそれで仕方ないけど‥
猫猫は今羅門を父として幸せに生きてるし
羅漢はようやく鳳仙と再会して幸せそうだし
羅漢と猫猫の間の溝も少しずつでいいから
薄れてったらいいなと願ってしまった。
あと‥羅漢が壬氏様を毛嫌いしてるのは
大事な娘にべったりな男だからってのが
大きな理由だろうけど、そこももう少し
友好的になってくれんかなと願ってる 笑

ある時後宮で子猫を見つけた猫猫。
犬猫を飼っている妃はいないようで、
何らかの原因で迷い込んだんだろう。
このまま放っておくわけにはいかない
と捕まえようとする猫猫‥警戒心の
強い子猫は敵意を剥き出しにするも、
まさかの後ろから抱きかかえられ
簡単に捕まってしまっていた 笑
猫を抱き上げたのは見慣れない女官。
まだ名乗ってすらいないけど、こんな
デカデカと登場させてくれちゃって‥
この後の物語に大きく関わってくる子
なのかなーと一応紹介しておきます 笑
もう出てこなかったらどうしよう‥

猫猫のこまめな世話により子猫は
体力も回復し餌も問題なく食べるし
排泄も自分で出来るようになった。
医局で世話をしていたんだけど、
猫が元気になってくると少しずつ
様子を見に来る者が現れ始める。
‥ここの医官名前出てましたっけ?
猫猫がやぶ呼ばわりするからやぶ
しか呼べる呼び方が思いつかない 笑
そのやぶと高順は子猫にデレデレな
状態だったけど、壬氏様は構いは
するもののそこまでではなかった‥
の‥
だけれど‥
猫好きはこうらしいですよという
話を猫猫から聞いているうちに、
猫と猫猫が少しずつかぶり始める。
「いや、わからなくも
ない気がしてきた。」
終いには可愛くて仕方なくなって
しまったのかすっかり猫好きの
ような行動を取っていて笑った 笑
最終的に子猫は『盗賊改』という官職を
与えられ医局の備蓄の鼠捕りをしている。
ちなみに毛毛(マオマオ)と名付けられ、
猫猫はちょっと解せない様子だったけど
個人的にはすごく合ってると思った 笑
~ひとこと~
今回は序盤から続きが気になりすぎて
ものすごい勢いで読んでしまいました。
これまで羅漢は誠実さなど持ち合わせて
いないのではないかと思っていたけど、
鳳仙に対する思いだけは誠実そのもの
なのかもしれないと思わされました。
鳳仙の命はもう長くなくても、少しでも
長く幸せにいてくれたらと願ってます。
そんなお話以降いろいろありましたが
最後は毛毛のお話でおしまいでした。
毛毛も毛毛を愛でる人達もなんだか
可愛すぎてめっちゃ和みました 笑
羅漢や猫猫の出生についていろいろ
わかったことで自分の中で一段落ついた
気になってましたが、そういえば消えた
翠苓の話とかそれっきりでしたよね。
あと楼蘭妃とその父親の存在も、今は
まだ大人しいけどすっきりしない不安が
あってずっと気にはなってるんです。
今後物語がどんなふうに進んでいくか
楽しみに次巻を待とうと思います。
良かったらまたお付き合いください。