著:唐々煙 先生

「どうか、この錦をお側に――。」
そう言ってオロチとなった空丸の
元に跪く錦。彼女の本心はこの
辞典ではわからなかった…でも、
錦はオロチ様ではなく空丸様と
呼んでいた…錦のことはきっと
信じても大丈夫なんだろう。
そう思ってた。合っていた。
「その刀は曇家代々の守り
刀だそうです。人を斬る
事のない護るための刀。」
「この刀があれば、大蛇と器が
切り離せると聞きました。」
そう言って空丸に斬りかかる。
あとになってみれば、牡丹
から話を聞いて自分で選択した
結果がこの行動だったという。
空丸のおかげで変われたんだ。
空丸がいたから、こんなふうに
思えるように、自分で決断
出来るようになったんだろう。
錦は、宝刀を持ってその場
から走り去っていった。

しばらく人里から、人々から
離れていた宙太郎は現状把握に
少々手間取ってはいたけれど、
牡丹に話を聞いて動き出す。
「刀を持ってこの先の隧道(トンネル)
を抜けて京都に出て下さい。大蛇を
太陽の下まで誘導するのです。」
宝刀で器と大蛇を切り離せる。
そんな情報と共に、大蛇の
弱点は『太陽』という情報も
手に入れていたようだった。
宙太郎を乗せて必死に走るゲロ吉。
でもその先は行き止まりだった。
工事の途中…まだ貫通はしていない
道だったようだ。でもそんな先から
突然やってきたのはまさかの天火。
ほんと、素晴らしいとこからww
いろいろ混乱する宙太郎だったけど…
「お前がやるんだ。大丈夫、その
刀を振り下ろすだけで良い。よく
頑張ったな。今度は俺がついてる。
あとすこしだ、踏ん張るぞ宙太郎。」
天火の言葉で、宙太郎も動き出す。
…ほんと良かったよ、頑張れ宙太郎!!

逃げ回るオロチ、ようやく
捕まえて宝刀を叩きつけると…
「空兄が二人!?」
分離とか…びっくりしたわ。でも
これでちゃんと空丸が帰ってきた。
意識が戻ったらそこに天火がいて
…さすがの空丸もここは涙が出た。
そして蒼世さんが安倍家代々の宝刀、
古くより大蛇討伐に関わってきたと
いう刀を空丸に貸してくれた。
あと少し、頑張れ曇兄弟!!

空丸と宙太郎を見送って、そのまま
フラついて倒れそうになった天火。
そこで支えてくれたのは蒼世だった。
今まで話せなかった大蛇の人体実験
のことから犲の頭を続けられないと
辞めることにした理由まで…今まで
溜め込んでいたものを吐き出そうと
するかのように天火は一気に話す。
「怖かったんだよ。
お前等の重荷になる事が。」
多くを泣かせてしまったことも、
犲を裏切る形になったことも。
いろいろ後悔はしている…
「どうすりゃ良かったんだ…。」
きっと、何度も何度も悔やんだろう。
だから、今生きていられてこれ以上
後悔がないようにと、比良裏の言う
ことも聞かず好き放題に行動する。
きっと、そういうこったろうな。
全てを話したら、蒼世はすごく
スッキリしたような顔をしていた。
裏切られたと感じていたんだろう。
でも、そう単純なものではなかった。
裏切りではなかったんだって。
ああ、なんかほんと、良かった。

『オイラ自分の事しか考えてなかった。
空兄、白兄、ごめんなさい。』
自分がしようとしてた復讐は
間違ってたんだ…心配して
くれる人がいる、迷惑を
かけてしまうことになる。
いろんな人のお陰で、ようやく
間違ってたということに気付けた。
そして宙太郎は嘉神の復讐すら
止めようと必死に訴えかけた。
「全身全霊を捧げた神にも裏切られて
どうすりゃええんじゃ。神に復讐する
為だけに僕は此処におるのに否定せん
でよ。僕の生きる理由を取らんでよ。」
嘉神がこんなふうになってしまった
のにも、それ相応の理由があった。
宙太郎にはあって嘉神にはないもの
なんて、きっと山程あったんだろう。
「頭なんてオイラがいっぱい撫でてやる
っス。間違ったら叱ってあげるっス。」
「だから生きる理由が復讐なんて
悲しい事言わないで欲しいっス。」
そんなふうに必死に伝える宙太郎に、
嘉神も気持ちが動いたように思えた。
その後、ゲロ吉によって
台無しになりかけたけどもw
嘉神と一緒に行動していたことで
結果的に罪人になってしまった。
それでも、一生かけて償って、
後悔していくと話した宙太郎。
「キレイじゃなくていいっス。
どんだけ泥んこでもかっこ悪く
ても終わりじゃない。大好きな人
達と一緒なら生きていけるっス。」
そう話した宙太郎に、
嘉神はボソッと呟いた。
「――ええねぇ。」
きっと彼も、更生できると思う。
宙太郎と会って、彼のどこまでも
まっすぐなことを知ってしまって。
まだやり直せるんだって…結局は
気絶した宙太郎を安全な場所に
移動させて、嘉神はその場から
消えてしまったのだけれども。
優しさを、温かさを知ってしまった
から、きっと嘉神もこれから変われる。
そんなふうに信じてみたいね。

最後の最後、空丸と宙太郎と、
そして武田(犲)の三人で大蛇
を倒した。空の雲は晴れていく。
全て、終わったんだ。
「本当のお前は何処にいる。
曇神社にいた事はあったか?」
そう問い詰める天火に対して、
白子はこれが答えだと言った。
さよならと行った白子の表情が
あまりに優しくて、涙が出た。
きっと、曇家にいた白子は
本当の白子だったんだろう。
獄門処の狐面の所に来る度、
表情が柔らかくなっていくと、
いつか風魔を裏切るのではと
心配されていたくらいだもの。
彼は結局風魔頭領として
役目をやり遂げたんだろう。
そして全てが終わった。
これ以上、もう繰り返すことが
ないように…自分の命を捨てて
今度こそ風魔を滅ぼすことを…
もしかしたら曇の家に行って
あそこに居場所が出来てしまって
からずっと考えていたのかもな。
俺が生きているかぎり
風魔の死なない。
↓↓
俺の命で風魔を終わらせる。
みたいなね。これはやっぱ
悲しいな…でもそれ以降、
風魔の死体は一体も見つかって
いないらしい…一族が生き残って
しまうのもいろいろ不安はあるけど
それでもやっぱ生きててほしいな…。

多くのけが人も出たけれど、
一番ヤバそうだった天火は
大蛇の細胞が大分抜けたそうで
半身は動かなくなったものの、
…車椅子で大暴れしているww
平和で、明るくて温かい。
そんな時代が戻ってきた。
~ひとこと~
わ~、最終巻でした!!!!!
私ほぼほぼ泣いていたので、イマイチ
ちゃんとレビュー出来てんのか謎←
ほんと、最終巻読みながら何度鼻を
かんだか…ハンカチティッシュ必須w
1つ、書きそびれていました。
比良裏が前世の記憶を取り
戻したんです。あれはね、
もう、癒やされました~!w
前世の安倍比良裏って結構
ワンコみたいな感じのイメージ
だったんですが、今の比良裏は
クールというか、似ても似つかぬ
感じがだいぶあったんですよ。
でも、記憶のおかげか相手が
牡丹だからか、なんだかワンコ
が復活しておりましたww
ほんと、可愛いのなんのって←
いろいろ端折ってしまった部分も
ありましたが、本当に素敵な作品
だったな~と思います。この後に、
曇天 番外編…外伝ですかね??
も発売してるので、ぜひそちら
も読んでみたいと思ってます!!
あと『煉獄に笑う』ってのも出てるん
ですが、それは300年前の話だとか。
そっちもかなり気になっております。
本当に、素敵な作品に会えました。
唐々煙先生、素敵なイラストに最高の
ストーリー、ありがとうございました。