著:唐々煙 先生

天火の処刑日から一週間。
オロチが死ねば曇天は晴れる
はずだったのにずーっと雨。
天火の遺体…そんなことまで
彼は考えて生きてたんだね。
今後の世の中のために自分の
身体を捧げる覚悟を…今まで
彼が生きてきた時間、ずーっと
考えながら笑顔でいたんだろうか。
空丸はまだ彼の死を受け入れ
られていない様子だった。
そして宙太郎も…宙太郎の方こそ。
天兄は気まぐれだから、きっと
すぐにその木陰から顔を出して
帰ってくるっス…なーんて言って
神社の鳥居の所で雨の中もささず
ずーっと座って帰りを待っている。
突然知った事実、そんなに急に
受け入れられるわけがなかったんだ。
事態をちゃんと理解出来るように
なる前に天火の処刑が行われて、
頭が追いつかないままに過去になる。
…こんな調子の空丸や宙太郎に対し
なんとかしてあげたいって必死な
白子だって、きっとすごくつらく
感じているだろう…でも最後に
天火から弟達のことを託された
から…頑張らなきゃって思ってる。
…これから、どうなるんだろう。
天火は本当に死んでしまったの?
読者である私ですら、宙太郎の
言うように、そこらの木陰から
ひょっこり顔を出して帰ってくる
んじゃないかって…そう思いたい。

「天兄は国に殺されたんじゃ。」
例の爆発騒ぎのときだろうか、
獄門処にいたはずの嘉神はいつの
間にか脱獄してきていたようだ。
今の状況がまとまらず、どうしても
認めることが出来なくて混乱する
宙太郎に、嘉神は言い聞かせるよう
に、惑わすように言葉を並べる。
「悔しいじゃろう。」
「天兄を殺した奴が憎いじゃろう。」
「殺したいじゃろう。」
「なら起き上がれ、復讐だ。」
オロチとは何者か…少し前から
なんとなくそういう者の存在を
認識していた空丸とは違って、
天兄がオロチだから殺された
なんて言われても、きっと全く
理解できない状態だったろう。
このままじゃあいけない。
宙太郎の異変に気付いて…。

比良裏、滋賀県警。今は大木さん
って人の下で働いてる…のかな?
そこらの詳細はわからないけれど、
3巻ラストの処刑日、ちらっと出て
きておりました。天火と話してたな。
「後の事宜しくな。」って。
…600年前の安倍比良裏の
生まれ変わりなんだろうな。
あの頃の彼の強い思いが、
夢となって出てくるんだろう。
「知らない筈なのに愛しい。
触れたいのに存在しない。誰
だか分からない者への恋情は
奇妙で哀れな夢。まるで泡沫だ。」
…牡丹と、会える日は来るのかな?
あの時と今は違うものかもしれない。
それでも…約束通り会えるといいな。
きっと牡丹は、今もきっと
比良裏を待っているだろう。

空丸を特訓している間。蒼世は空丸を
天火と比べてしまうような様子が見えた。
空丸も一生懸命天火を追いかけ、
越えるために訓練を続けていた。
空丸…きっと心の内に抱えてる
ものはすごく多いんだろうと思う。
帰ってこない宙太郎を思い、兄・
天火の死を受け入れたくない思い、
天火がいない神社を、曇家をこれ
から護っていかなければという思い。
いろんなつらいことや不安を
抱えたままで、それでも笑顔に
なれるようになった空丸は強い。
きっと…大丈夫だよね?
ほんといろいろあるけど、
きっとなんとか出来るよね?

蒼世との…特訓を終えて神社に戻る
途中、彼女が傷だらけで倒れている
所を見つけ神社に連れてきた空丸。
嘉神にやられたようだった。そこに
宙太郎も同行していたと彼女は言う。
内心はすごく嫌がる白子さんだった
けど、空丸のいる所ではそんな態度
は一切見せなかった。空丸がいない
所で「長(おさ)」と呼んで話しかけて
くる彼女に対しては、今まで見たこと
もない恐ろしい表情をしていた。
今の彼からは全く想像が出来ないけど、
昔の、本来の彼はそういう人だったの
かもしれないね。そして天火に会って、
曇家の家族の一員になって変わったんだ。
「忍は従う事しか学んでいない。
命令でしか動けない。己の意思もなく
今も誰かの命を待っているだろうな。」
「目的もなく唯無意味に生きる。
忍にとって自由は地獄だよ。」
白子さんが、そんなこと
を話していたらしい。
そんなことを話した彼が、元は同じ風魔の
彼女に「お前はもう自由だ」と言っていた。
ほんと、白子さんの言っていた通り
なんだろうな。大怪我をして、やっと
治療が終わってまだ休んでいなくては
いけないような身体なのに、助けて
貰って何もしないわけないはいかない。
自分は役に立つのだと分かって貰って
命を貰わなければいけない…まるで
そんなふうに思っているかのように、
空丸から休んでいろと言われたのに
彼女は空丸の仕事を手伝おうと動く。
これは何度動くな、休めと言っても
それは聞き分けてくれないようだった。
命を貰うことで初めて、生きる
意味を与えられるって考え方
の種族なのかもしれないね。
正直、白子さんにはすぐに出て行け
みたいなことを言われていた彼女が
空丸に受け入れられて知らぬ間に
家族になってたなんて…宙太郎を
探しに出ている白子さんが帰って
きたらどうなるか恐ろしいんだけど…
今後の不安は空丸の笑顔がなんとか
してくれるだろうと信じたいね。
追記:彼女の名前は錦(にしき)と
言うらしい‥今まで出てきてたっけ?
私見逃してた可能性はなきにしも
あらずですが…後になってさらっと
空丸が言っててびっくりしたよ←

…うそ。マジで。
空丸、今度は空丸ですか。
いつ帰ってきたのか記憶がなかった。
布団で目を覚ますと自分は血まみれ。
オロチに意識を持ってかれた
空丸が暴れまわってるってこと?
…遭遇してしまった犲・蒼世の
右腕と言われる強さの高峯さんは、
簡単にやられてしまったようだ。
死んだかはわからないけど、
随分ひどい切られようだった。
ここ最近、少し前から空丸は
ずっと体調が優れないようだ。
頭が痛い…と。これはもしかして、
もしかしなくてもオロチの影響?
表向き大丈夫そうにして頑張ってる
人ほど、内に秘める闇は大きかったり
するものなのかもしれない…そういう
のに、オロチが棲んでしまったのか?

い…生きてたぁあああ!!!!!!!
何がどうなってこうなったかは
わからないけど、きっとあの処刑
の日、彼は死ななかったんだ。
比良裏と、彼の属しているどこか
が動いて処刑されたことになった
っていう話なのかもしれない。
天火は比良裏の所で何かに
使われている状態なのか?
わからないけど、比良裏がいる
場所の人はオロチに執着する
岩倉具視との敵対組織である
可能性もあるのかもしれない。
空丸はオロチに侵食され始め
それを自覚して怯えている。
宙太郎は嘉神のもとで殺戮者
になるか死ぬか…すごく危ない
橋を渡ってしまっている。
この先、とても怖い。
でも、天火が生きてた。
生きてたよ。まだ身体はボロボロ
何だか、不調そうだけれど生きてた。
一先ず、生きててよかった…。
~ひとこと~
本編読み終わって頭の中いろいろ
いっぱいいいっぱいの状態であとがき
を読んだら、つい吹き出してしまった。
唐々煙先生のあとがき、本編があまりに
シリアスなのですっごい癒やされますた。
本編、私はこんな状況で笑える
程心大きくないんですが・・・
私もなりたいな。どんな状況
でも笑えるくらい強い人間に。
「オロチは負の感情に棲むと云う。
精神を病んだところに入り込み憑く。
記憶を失い自我を失い人を喰らい、
器は大蛇に乗っ取られてゆく。」
処刑の日、オロチだと言われた天火は
処刑されていなかった。それなら
天火がオロチだということでも違和感
ない話だったけど、今度は明らかに
空丸がオロチだと言う状況である。
今後…どうなっていくんだろうか。