著:赤井ヒガサ 先生

今日は授業がお休みらしく、王子4人
とハイネで街に買い物にやってきた。
王宮に戻ってからもリヒトは働いて
いたカフェのことが気になっていて、
ハイネと2人で様子を見に行った先‥
2人を出迎えてくれたオーナーは
元気そうで嫌がらせの犯人も無事
捕まったのだと報告してくれた。
店の常連の探偵さんがその犯人を
突き止めてくれたのだと言ってて、
探偵はハイネの知り合いだった。
「…………グスタフ…。」
「…ああ…久しぶりだね我が親友よ。」
彼の正体は元ハインリヒファミリー
のナンバー2で、ハイネにとっては
兄弟のような存在だと言っていた。
そして、リヒトには言えなかたけど
ヴィクトールを殺そうとした張本人。
最初は気まずそうな2人だったけど、
お互いの後悔や今の気持ちを聞いて
嫌がらせの件の話を始めた頃には
昔のように信頼し合える2人に
戻ってたんじゃないかと思う。
このカフェ以外でもクベル人が経営
する店で同じような事件が起きていて、
それはハインリヒファミリーではない
新興マフィアによるものだったらしい。
だが捕まえられたのは実行犯のみで
まだまだ不安は拭いきれないようだ。
ハインリヒファミリーはクベル人を
救うために動いていた集団だったが、
この新興マフィアの目的は資金稼ぎ。
元マフィアとはいえ彼らなりの信念を
持って必死に生きてきたハイネ達から
見たら納得いかない存在だろうな。
あの頃のことはグスタフに自身反省
する部分も多く、今は王族に対する
恨みの感情もなくなっているようだ。
今は探偵として彼なりの方法でクベル
人を助けようと頑張っているようで、
ハイネも安心しているように見えた。
新興マフィアが今後さらに過激な行動に
出る可能性はきっとあるし不安もある。
でも今はハイネと、立派に成長した国王、
そして良い国を作っていくことを全力で
目指している国王候補の王子達がいる。
きっと、良い方に変わっていけるよね。

ある日ヴィクトールの元に呼び出された
王子達とハイネ‥するとそこにはアインス
王子とローゼンベルク伯爵の姿もあった。
これまではこのメンツで顔を合わせると
ちょっと居心地の悪い空気になることも
多かった気がするけど、こころなしか
前より和やかな雰囲気で、ヴィクトール
も随分と嬉しそうに涙目になってた 笑
そんな親ばかモードからは一転、
ヴィクトールが真面目な顔に戻る。
「近いうちに次の国王をお前達の
中から指名しておこうと思っている。」
そのための判断材料として、ひと月後に
ある建国記念式典で王子達はどんな国に
したいかをスピーチすることになった。
アインスには何度も経験してきたこと
かもしれないが4人の弟王子達にとって
スピーチはこれまで経験のないことで、
先程まで記念式典が楽しみそうだった
4人の王子達は絶望的な顔をしていた。
まず慣れて自信をつけるため一週間後
王宮の人に向けたスピーチをすることに。
テーマは自由、いろいろ迷走してたけど
なんとか4人共内容は形になって、あとは
ひたすら発生や滑舌の練習、姿勢の矯正、
あとは肺活量向上のための走り込みなど
それはそれは地道でハードな内容だった。
スピーチ実習2日前にしてこれといった
成果も得られ弱音を吐く王子達だけど、
「--貴方がたが見据えるべきは2日後
の実習の先、本番の建国記念式典です。
実習までの短期間では付け焼き刃
でしょう。しかし約1ヶ月後には
きっと貴方がたの役に立つはずです。」
弱音は吐く、だって疲れてるんだもの 笑
それでも王子達はハイネを信じてるし
頑張る気だって充分にあるようだった。
しばらくはしんどいかもしれないけど、
いつかはそんな日々が糧となって立派に
成長した彼らになると思えば‥近い未来
彼らは今の努力を誇りに思えるだろう。
頑張れ、みんな !!

実習を終えてみると反省点も出てきて、
本番まで改善しようと意気込む王子達。
まずは本番のスピーチを考えるぞと
当たり前のようにハイネと一緒に
頑張ろうとしていた王子達だけど、
「え?私本番のスピーチは
お手伝いしませんよ。」
スピーチの内容も判断材料なため
ハイネは手伝うことはできないのだ。
それからは毎日の授業を受けつつ
王子達は一人でスピーチ原稿を考え、
スピーチのための日々の訓練などは
自主練という形で続けていくことに。
でもそんな彼らへのプレッシャーは悪い
方へと転がってしまったようで少しずつ
様子がおかしくなる王子達にさすがに
まずいと思って式典まで残り一週間を
切った頃、ハイネは王子達を集めた。
「皆さん、今日1日スピーチを考えるのは
禁止にして思いっきり遊びませんか。」
スピーチのことでいっぱいいっぱいな上
時間も全く余裕がない王子達にとっては
今そんな暇はないと思っただろうけど、
それでも今の彼らには必要なことだった。
現状、スピーチに真面目に向き合わず
サボりすぎて余裕がないなら全力で
向き合う他やることはなかっただろう。
でも4人共真剣に向き合い続けたからこそ
精神に限界が来てしまってるんだよね。
そういう人達にとって休息の時間は大切。
今はわからなくても、1日休息をとって
翌日スピーチに向き合おうとした時には
モヤついた気分はスッキリしてるはずだ。

式典当日‥多くの人が集まっていて
王子達の友人も見に来てくれている。
そんな人達に背中を押され頑張ろう
と意気込む気持ちもあったけれど、
正装でいつも以上に威厳を感じる
アインス王子を目の当たりにした
4人の弟王子達は、不安になった。
嫌でも完璧な第一王子と比べられること
になり、国王になるために決して失敗が
許されない場であると再確認したからだ。
一人一人、これまで頑張り続けてきた
ことや変わってこられたことを伝えて
喝を入れるハイネの言葉に王子達は
やっと冷静に前を向けるようになる。
心から信頼する教師から向けられた
激励の言葉と思いは、彼らの不安を
取り除くには充分だったと思う。
さらには、ちょっと伝わりにくかった
かもしれないけどアインス王子だって
彼らを応援するような言葉を向ける。
「王位継承を大きく決めるスピーチでは
あるがお前達のスピーチが俺より劣って
いてほしいとは全く思っていない。
これは大切な建国記念式典だ。スピーチ
を引き受けた以上グランツライヒ王国の
王子としての使命を果たせ。」
もう見下すことなどしない、対等に
ライバルだと認めているからこそ
向けられた言葉だったように思う。
顔は怖かったけども、怒ってるみたいに
見えたかもだけど彼なりの激励だった。
そして、アインス王子もこの場に
真剣に向き合おうとしている。
「……大切な時くらいお前の期待に応えて
みせる。今まで面倒をたくさんかけてきて
…悪かったと思っているんだ、一応。」
4人の王子達にとってハイネが心強い
存在であるのと同じように、きっと
アインス王子にとって伯爵は頑張る
勇気をくれる存在なのかもしれない。
ほんと‥みんなすごく素敵になったな。
弟王子達はもちろん、アインス王子も。
今後のグランツライヒ王国が楽しみだよ。

スピーチの順番はくじで決めた。
最初にスピーチすることになった
のは四男のレオンハルトだった。
観客は好き勝手に言葉を発する。
白百合と称されるレオンハルトを
見に来た様子の女性達の黄色い声、
真っ先にレオンハルトが出てきた
ことを批判するような声もあった。
でも緊張はしつつも、レオンハルト
は物怖じせずにスピーチを始める。
彼のまっすぐで素直な思いだった。
途中で原稿が風に飛ばされてしまい
真っ青になるも、兄弟達の頑張れと
応援するような眼差しに持ち直す。
原稿はないけれど、たくさんの
想いを込めて作ったスピーチを
たくさんの人々に届けるために。
スピーチの途中、レオンハルトは
兄弟達の存在を誇るように口にした。
「父と比べたら僕は力不足だと思います。
…でも…僕には素晴らしい兄弟がいます。
一人では無理でも、兄弟皆の力を
合わせたら父上よりも優れた王に
なれる…!僕はそう確信しています!」
その言葉がきっかけになったみたいに
リヒトが、ブルーノが、カイ王子が、
そしてアインス王子まで入ってきて、
途中から個人のスピーチではなかった 笑
このスピーチが、判断材料として
どう受け取られたかはまだわからない。
でも国民にとっては、どの王子が国王に
なっても大丈夫だと安心できるくらいに
心に響くスピーチになったようだった。
私も‥ちょっと泣いてしまった。
すごく素敵なスピーチだった。
結局誰が国王になるかはわからないけど
たとえ誰がなっても‥大丈夫そうだね。

「--私が指名する次の
国王は…アインス、お前だ。」
式典を終え、現国王から指名された
のは時期国王はアインス王子だった。
それに対して、アインス王子自身が
一番驚いた顔をしていたように見えた。
4人の王子達は、寂しいような納得した
ような‥複雑そうな顔を見せていたけど
この話はそう簡単には終わらなかった。
「--ですが陛下、私は長く
王座につくつもりはありません。」
信頼の厚いヴィクトール国王陛下から
新たな王に変われば批判の声も上がる。
彼はその矢面に立ち次の国王に渡す
土台をしっかり作った後、退位後は
政治の実務にまわると言っていた。
アインス王子は一度全てを投げ出し
自分の命までも捨てようとしていた。
その時から、自分には国王になる
資格はないと考え他の4人の王子の
誰かがこの国を支える国王になる
未来を描いていたのかもしれない。
アインス王子自身のけじめだと言われ、
国王陛下もそれを認めてくれたていた。
「--なので、私の次となる王を今
私が指名しておきたいと思います。」
そうして指名されたのはレオンハルト。
まだまだ不安は多いし、指名された
レオンハルトは全力でビビってたけど
何があっても王子皆が支えになって
くれる、一緒に考えてくれるから。
ようやく頑張りますと宣言したところ
でただし‥と手厳しい忠告が入った。
「お前がサボって国王にふさわしくない
と思ったら指名は撤回するからな。」
笑笑
今後も全力で、これまで以上に日々
精進し続けることになりそうだね 笑

アインス王子の決断にローゼンベルク
伯爵は何を思っていたんだろうか。
わからないけど、彼がしっかりと強い
意志を持って決めたことなのだから、
きっと文句を言いながらもこれから先
ずっと彼の進む道を支えていくつもり
なんじゃないかなって勝手に思ってた。
きっと伯爵にはそうしたい気持ちが
あったんじゃないかって思うんだ。
でもそれを決めるのはアインス王子で
‥だからこそこのシーンは嬉しかった。
この二人の信頼関係も‥きっと元々
深くあったかもしれないけど王宮に
ハイネがやっていろんな変化が起きた
ことでより強固な絆になった気がする。
仕方ないなんて言いながら、伯爵は
随分と嬉しそうな表情を見せていて、
この2人はこの先もずっと支え合って
一緒にいそうだと、少し嬉しくなった。
~ひとこと~
‥ああ、終わってしまわれた。
レビューでは書きませんでしたが、
アインス王子が国王になってから先
それぞれの王子がどうなっていくのか
説明のような書き方ではありましたが
漫画の中でしっかり書かれています。
そこまで紹介してしまっては勿体ない
ので、そこは興味を持ってくれたあなた
自身で最初からしっくり読んで頂けたら
と思い記事では触れないでおきます 笑
すごく素敵な物語だった。
上手く言葉にできず申し訳ないですが、
本当にキャラクター達も物語も魅力
しかなくて‥何度泣かされたことか。
でも初登場の時は酷かったですから、
そんなひねくれ王子達をここまで素直で
魅力的な存在に成長させるきっかけを
くれたのはやはりハイネだったろう。
とても大好きな作品なので、この物語の
魅力を少しでも多くの人に知ってもらい
興味を持ってもらえたら嬉しいです。
最終巻まで私の拙いレビューにお付き合い
頂いた皆さん、ありがとうございました。