王室教師ハイネ 第16巻

著:赤井ヒガサ 先生

伯爵の体調を心配して様子を見に
やってきた4人の王子達‥中でも
カイ王子は本気で心配していた
ようで、大丈夫なのを確認すると
すごく嬉しそうな表情を見せた。

カイ王子もブルーノも、自分達に
出来ることがあるなら力になる、
頼ってほしいと言ってくれた。
ほんと、いい子達なんだよね。

そんな王子達やハイネの言葉を受け、
これまで敵だと決めつけてきたけれど
彼らの存在がアインスを変えてくれる
かもと彼らに頼ってみることにした。

ちょっと意地の悪いことも言ってた
けど、これまでハイネや王子達にして
きたことについて謝罪もしてくれた。

いつかはそうなったらと思ってたけど
思いのほかすんなりその変化は起きて
‥ローゼンベルク伯爵は本当に何より
アインスの今後を大切に思ってるんだ
とわかって少し嬉しい気持ちになった。

きっとそれが、そう簡単なことでは
ないからこそ倒れるまで無理をして
しまったんだとは思うけど‥今回の
選択が良い変化に繋がるといいね。

日を改めてアインスのいるシュバルツ
宮殿に足を運んだハイネと王子達‥
やっっっと入れてもらえましたね 笑

でも問題はその先、アインスの部屋の
前まで来てノックをしながら呼びかけて
みても反応はなく、鍵もかかっていて
それ以上は打つ手がないと思われた。

「エルちゃん…ごめんね
…力になれなくて。」

なんとかしたいにも方法が思いつかず
動けずにいた伯爵にカイ王子は言う。

カイ王子の真っ直ぐな思いに、全く
応えようとしないアインスへの怒りが
爆発してしまったのかもしれない 笑

ものすごい勢いでドアを殴って
叫ぶとそのままドアを蹴破った。

昔の伯爵がちょいちょい顔を出して
ちょっとおもしろいこの頃です ←

これまではあくまでアインスの侍従長
として、王子達やハイネの前でこんな
態度を見せることはそうなかったのに、
こういう態度を見せるくらいには気を
許せる相手になったのかなと思えた。

伯爵は本当にいつも1人で頑張って
暴走してやり方を間違えて‥って
なってしまってた気がしてたから、
元々悪い人じゃないんだろうから。

これまでは頼れる人がいなかった
ってだけなのかもしれないね。

ドアを蹴破ってまで部屋に入った
のに、室内はまさかのもぬけの殻。

その後少々手間取りはしたものの、無事
アインスを見つけると引きこもっていた
原因が伯爵の口から明かされることに‥

「勝手にいなくなったあげく…こんな
ところで…一人で…銃なんか持って…昔の
女に未練たらたら引きずって勝手に死のう
としてんじゃねぇよこのクロボケ野郎!!」

‥アインスの無事を確認してやっと
安心したばかりのハイネと王子達は
突然の情報にしばし固まっていた 笑

まさかとは思ったけど、本当に失恋。
でもこれはついこの間の縁談の話では
なく、5年ほど前にいた婚約者との話。

当時外交の一環で婚約者となった
マティルデにアインスは恋をした。

でもマティルデにとっては突然の
ことで、覚悟を決めてくれたとは
いえ結果昔からずっと目指していた
画家への道を諦めさせることになる。

アインスが彼女に惹かれたのだって
すごく生き生きと絵を描いている
姿を見たのがきっかけなようだし、
政略結婚で夢を諦めさせるなんて
選択をしたくなかったんだろうな。

彼女のためを思っての婚約破談、
アインスにとっては失恋だった。
5年経っても立ち直れない程のだ。

それだけ惚れられる相手に出会えた
ということだけでもきっと幸せなこと
だと思うけど、第一王子という立場で
彼の現状では問題が多かったろうね。

にしてもこの泣き顔はもちろんだけど
5年前の回想の中に描かれていた笑顔‥
マティルデといる時の柔らかい表情は
彼の印象を大きく変えるものだった。

アインスは過去の恋を引きずった
結果女性とまともに接すること
すら難しくなってしまい、父から
の信頼も王位継承への道も失って
しまうと考えているようだった。

「第一王子として…こんな
俺に価値などない。お前達の
誰かが…国王となればいい。」

こんなふうに、一人で諦めて投げ
やりな態度をとってしまう程に、
自分で自分を責めてしまってた。

でも誰一人として、アインスと同じ
ように彼を責めようとはしなかった。

価値がないと思っていることに怒って
くれる伯爵、そんなことないと全力で
否定してくれたカイ王子、完璧でない
自分を許していいと言ってくれたハイネ。

何よりもこのありのままのアインスを
弟達は尊敬し、憧れだと言ってくれた。

「ありがとう俺の弟達…
俺をありのまま受け入れて
くれて…ありがとう―――…。」

弟達の存在もあったから、より完璧で
いなければと思う気持ちも強かったろう。

そんな彼らがありのままを知ってもなお
受け入れてくれた‥きっとアインスは
これから前向きに変わっていけるよね。

そうだったらいいなと願います。

今回の騒動で、伯爵には決して考え
つかなかったことを弟王子やハイネ
の口から言われ、それがアインスの
気持ちを和らげることに繋がった。

完敗だなんて言っているけど、少々
悔しい気持ちはあってもそれ以上に
救うことが出来てよかったという
安心感のほうが強いんじゃないかな。

アインスが国王になる道を目指して
努力し続けてきたからこそ、伯爵は
アインスを国王にすることをゴールと
してこれまで動き続けてきただろう。

でもアインスが国王になる道
だけでなく他の選択をした時は、
伯爵はまっすぐにその道を応援
してくれるんじゃないかな?

「お前が生きてさえ
いればそれでいい…!」

本当に、心配してたもんなあ。
アインスはもう、望まれる道に
進むために完璧にならなくては
なんて考え方はしなくていいんだ。

アインスが彼の意志を持って
目指す道を決めればいいと思う。

それが国王でも、また別の道でも。
きっと、生きて前を向いて進む道を
伯爵は喜んで後押ししてくれる。

ほんとこの2人の絆はすごいな。
伯爵の気持ちがやっと届いたようで
苦しい思いも多かったと思うけど、
良かったなって少し嬉しくなった。

今回の失踪は表向き外出の連絡の
行き違いによる勘違いと説明され、
真実を知っているのはアインスの
家族と伯爵、ハイネのみとなった。

お詫びも兼ねて弟王子達の所に大量の
甘いものを持ってやってきたアインス。
レオンハルトは大喜び、大騒ぎだ 笑

それらのお菓子を囲んで、お茶会を
始めた5人の王子様と伯爵、ハイネ。

そこで気づかされたことがある。
これまでアインスの印象を冷たく
怖いものにしていたいくつかの
出来事が誤解だったということ 笑

アインスは、女性に関すること
以外にも言葉足らずであったり、
不器用な面もあるのかもしれない。

「兄上…誤解されやすいタイプ…?」

カイ王子が親近感を抱く程に 笑

知ってみればやはり普通の人で、
彼らの兄で、ヴィクトールの息子
なんだと納得できるいい人だった。

そんな中、今回の騒動の中でいつも
馬鹿だと言ってきたレオンハルトの
言葉に救われたことに気付かされる。

自分をまるで欠陥品のように、恥だと
感じていた、死んでしまおうとする程
自分を追い込んでいた気持ちを軽く
してくれたのはレオンハルトの言葉。

レオンハルトの、自分の欠点を
認められるのは彼の強さだろう。

レオンハルトに対して、そういう彼の
良さをないがしろにして欠点ばかりを
責めてきたことを反省したんだろう。

この後、馬鹿だと国王候補としても
認めようとしなかったことを謝罪し
撤回すると伝えたのだけれど‥

アインスには確かに気持ちの変化が
あってこうして伝えてくれたのに、
レオンハルトはお菓子に夢中で
言葉は全く耳に届いていなかった。

レオンハルト、そういうところよ 笑
そんなだから馬鹿って言われるの。

ちょっとアインスが不憫になった。
でも本当、表向きどちらが目立つかは
別として人には長所も欠点もあるんだ。

レオンハルトは最初は欠点が悪目立ち
していたかもしれないけれどハイネと
共に学び随分と成長してきたと思う。

ハイネは目立たなかったレオンハルトの
長所を伸ばす手伝いをしてきたんだね。
もちろん他3人の王子達に対してもだ。

アインスにもハイネのような
存在がいたらこんなに遠回りする
こともなかったかもしれないね。

ハイネを通して、アインス
のことについて報告を受けた。

それによって今まで誤解して
いた部分に気がついたと共に
自分の態度や選択がアインスを
苦しめ追い詰めてしまったんだ
と責任を感じるヴィクトール。

ハイネを教師として最初は心配な
部分の多かった弟王子達も成長し
随分と頼もしい存在になった今‥

「――私は次のグランツライヒ
王国国王を我が息子達の
中から一人指名する。」

なんだかんだとまだ先のこと
なんだろうと勝手に思ってた。

でも白黒はっきりさせようと動く
ことをヴィクトールは決断した。

今すぐ指名してしまうには、
みんな成長しているにしたって
少々不安に感じてしまうのは
私だけだろうか、一体どんな
選択をするというんだろう。

めっさ気になるところですが
続きはまた次巻みたいです‥。

~ひとこと~

今回の一番の収穫は、第一王子である
アインスが冷酷な王子様ではないと
わかったことでしょうか‥和んだ 笑

詳細までは紹介してませんが、
ちょっとほっこりするような
勘違いエピソードがあったので
ぜひ読んでもらえたらと思います。

関わってみれば、知ってみれば、
印象って随分と変わるものでした。

お話の最後のヴィクトールの発言、
今後に不安はありますが、それでも
努力し続けてきた王子達にとっては
ついに来たかという感じかもです。

どんな決断になっても、誰が
選ばれるとしても‥きっと悪い
ことにはならないんじゃないか。

誰か一人を国王とした所で、その
人に足りない部分は他の王子達が
助け支えてくれる気がしてるから。

まあ‥そう簡単ではないのかも
しれませんが、兄弟達の絆が
しっかりしているのでそんな
安心感を覚えてしまいます 笑