著:赤井ヒガサ 先生

昨晩、怒りのまま出てけと怒鳴り
つけてしまったレオンハルトは
言い過ぎたかと少し後悔するも、
ハイネ自身が悪を認めたことで
信用できないと暗い表情だった。
兄弟それぞれに不安はあったと思う
けど、ハイネが話すと言ってくれた
ことを信じて翌朝ハイネの部屋を
訪ねると部屋はもぬけの殻だった。
「まさか…王宮を出ていって…。」
ブルーノの言葉にみんな焦って
探しに出ようとするけれど、
レオンハルトは動けずにいた。
きっとハイネを信じたい気持ちは
他3人と同じだけあったと思う。
それでも裏切られたんだと思う
ショックが大きすぎたんだろう。
きっと一晩経っても、彼の中で
答えを出せないままだった。
諦めるように、まるで自分に
言い聞かせるようにハイネを
否定する言葉を口にするけど、
3人は口々にハイネを肯定した。
ハイネのこれまでの王室教師として
の行動一つ一つが、理由もなく暴挙
に出る者じゃないと彼らに思わせた。
レオンハルトだってそうだったよね。
ただ、ショックで、信じることが少し
怖くなってしまっていただけだろう。
この後レオンハルトはすごい勢いで
ハイネを探しに屋敷内を駆け回った。
まあ結論として‥ハイネは王宮から
出ていったわけではなかったけど 笑
今回の状況でそう勘違いしてしまった
ことによって王子達はハイネに対する
自分の気持ちを再確認できたようだし
いい機会だったのかもしれないね。
「…お前は逃げなかった。何か僕達に
言いたいことがあるってことだろ。
まずはそれを聞いてやる。お前を
信用するかどうかはそれからだ。」
レオンハルトの言葉通り、ハイネは
決して逃げたりしなかった。約束通り
彼らに真実を伝えてくれるだろう。
あとはハイネの真実が何であるか、
きちんと聞かせてもらいましょう。

まずはハイネの素性について。
人種差別を強く受けていたクベル人だ
ということは前に少し触れていたけど
クベル人達のコミュニティでリーダー
をしていた‥というのはマフィアの
ボスをしていたということだった。
表では街の経済を動かし、裏では虐げ
られている人を武力によって助ける。
「いずれクベル人や移民全体の扱いを
変えてみせる。私はそう思っていました。」
これだけ言うと怖いイメージよりも正義
の印象の方が強いけど、彼らがしてきた
ことはそう単純ではなく、時には武器を
使ってきたし法を犯すことだってした。
そんな中でも人殺しはしないという
決まりがあったようだけど、組織内
には不満を溜める者も多くいたようで
「結局国のトップを消さない限り
何も変えることはできない…とそう
考える者達が出始めたのです。」
表立って行動して自分が消されては
組織の統率も取れなくなって現状は
悪化してしまったろうし、誰を信用
して大丈夫かもわからずに、その時
ハイネは1人で不穏な部下を警戒し
見張る程度のことしか出来なかった。
そこで事件は起きる。
この頃、ヴィクトールは街の様子を
見るために度々王宮を抜け出していた。
それを把握されていたようで、ある雨の
日ヴィクトールは襲撃に遭ってしまう。
ハイネは庇おうと間に入るも、複数人
で来られヴィクトールは怪我を負った。
犯人たちはヴィクトールを刺すと
早々とその場を去り、騒ぎになった
時そこに取り残されたのは返り血を
浴びたハイネと血まみれの国王陛下。
‥ハイネが犯人扱いされ、ハイネ
自身も否定しようとはしなかった。
それによって記録としてハイネが
国王陛下殺害未遂という歴が残った。
これが真実、確かに悪いことも沢山
してきたかもしれない‥それでも
ヴィクトールに対しては最初から
敬意を持っていたように思うし殺人
に関しても彼の企てではなかった。
アニメのお話とは随分違ったので少し
驚いたけど、私の知っているハイネは
やはり今も昔もハイネだったと安心
する気持ちのほうが大きかった。

あの事件からどれくらい経ったか‥
意識を失っていたらしいヴィクトールも
無事回復しハイネのもとに会いに来た。
当時ハインリヒと偽名を名乗っていた
彼の素性や本名まで調べ上げた上で、
一体何を話しに来たのかと思えば‥
「実は君にお願いしたいことが
あるんだ。ハイネ、私の先生に
なってくれないだろうか。」
‥あまりに突然すぎるだろう 笑
でもお互いにいい出会いだったんだね。
それからヴィクトールはハイネの元で
多くを学び、差別がなく誰もが幸福な
生活を送れる国を目指す決意をした。
同じ考えの政治家達も味方につけて少し
ずつ政治にも介入できるようになった。
事件、そしてハイネとの出会いから
ヴィクトールが治めグランツライヒ
が出来上がっていったんだろうね。
伯爵が言っていた件に関しては容疑のみ
だったけど、これまで法を犯したことが
あるのは事実、でも王室教師を頼まれて
から本物の教師になるべく必死に勉強を
して、ハイネの中の彼らの力になりたい
という純粋な気持ちには嘘がなかった。
王子達の気持ちに任せると言うハイネに
王子達はそれぞれに思うところがあって、
それでもはっきり答えを出せずにいた。
そんな中レオンハルトが声を上げる。
彼の言葉は、想いはもちろんこれまでの
ハイネとの時間が言わせたことだった。
ハイネのまっすぐな思いや教育が、
ちゃんと届いていた証拠だろう。
その一声で3人の王子達も嬉しそうな
笑顔でハイネを受け入れてくれた。
こっそり壁際に逃げたハイネ、王子達
には隠していたけれど彼が立ち去った
後の床には少し涙がこぼれていた。
嬉しかったんだろう‥ほんと良かった。

ハイネの過去のことは内密に‥
それで話は丸く収まったけど、
突然レオンハルトが口を開いた。
「でもやっぱりちょっと
ショックだよなぁ…。」
自分のことかと思い謝罪を口にする
ハイネだけど自意識過剰だった 笑
ショックだったのは、王国一の剣の
達人、軍神王などと言われている
ヴィクトールが負けたということ。
雨の日の夜で、背後からというのも
あったし、ヴィクトール曰く他にも
気を取られたことがあったというが…
その内容に関してはちょっと笑った 笑
大好きな息子たちの自分に対する憧れや
尊敬がどんどんなくなっていきそうな
その状況にヴィクトールは覚悟を決めた。
「そこまで言うならやろうじゃないか
模擬戦、4人まとめてかかってきなさい!」
とは言ったものの、息子たちを溺愛
するヴィクトールが彼らを怪我させる
不安があることをしたがらないわけで‥
どうも真面目に模擬戦をやってくれない。
そんな父を見てレオンハルトは思う。
(まともに相手をしてくれないなら
不意打ちで力を試してやる。軍神王
なら後ろからの攻撃でもかわせるはず。)
そう、後ろから‥それは例の事件の
時と似たような状況になるわけで‥
先程まで王子達とにこやかにしていた
ヴィクトールの顔が豹変すると、背後
からの攻撃を素早くかわし剣を向けた。
顔、気迫‥超怖い 笑笑
ヴィクトールの中であの事件は
トラウマのような部分があるようで
反射的にこうなってしまうのかも
しれないけど、それを向けられた
レオンハルトやそばで見ていた
兄弟たちは父親に向けて尊敬より
恐怖を覚え心の距離は遠ざかった 笑
でもうん、軍神王って言われる
のはきっと本当なんでしょうね。

『ティタニア・フォン・グランツライヒ王妃
公務をこなすかたわら17年前鉄道会社
の経営者となり、山岳地域と都市部の
交通・流通に大きく貢献する。現在は
建設業、都市開発にも事業を広げ
多忙な日々を過ごしている。』
という、王子達のお母様が登場です。
馬車を降り、ハイネの名前を呼びながら
駆け寄ってきた彼女は小石につまずいて
思い切りずっこけたドジっこであった 笑
きれいな見た目、でもおっとりした
一面もあり息子たちを目の前にした
時のヴィクトールににた雰囲気だが、
仕事モードに入ると突然変化した 笑
まさに国王モードとパパモードを
切り替えるヴィクトールのごとく。
聞いてみれば、彼女のこの変化には
ヴィクトールの仕事の仕方を真似
してみたという過去があるらしい。
いつの間にか定着したんだろうけど
もうほんと、そっくりでしたよ 笑
そんなティタニア王妃、見るからに
好印象なのだけれど、久々の再会‥
「なんでママがここにいるの…
おうちに帰ってこないママ
なんてアデル嫌いだもん!!」
思い切りアデルに避けられてしまった。
久々というのも帰ってきたのは3年
ぶりくらいで、丸々アデルの人生分。
仕事が忙しい過ぎて、真ん中の4兄弟は
続けて生まれたことでその間は仕事を
休んでそばにいる時間も長かったけど
アインスとアデルとは仕事も忙しく
そばにいられる時間も短かったらしい。
お土産に買ってきた本がアデルがずっと
欲しがっていたものだったのをきっかけに
歩み寄る努力をしてみるティタニア王妃。
まあでも簡単に上手くはいかない。ただ
アデルが彼女を嫌いなわけではなかった。
本がきっかけなのか、それともほんとは
気持ちを伝えたかったのかわからない。
でもこれがきっとアデルの本音で、
ママのこと大好きで寂しかったのね。
アデルをきゅっと抱きしめると、謝ると
アデルのことを大好きだと、宝物なんだ
と伝えた。仲直りは済み、今後はもっと
たくさん帰ってこれるように仕事を分散
できる仕組みをつくることにしたらしい。
良かったね、アデル !!

相変わらず体調の優れない?様子の
アインスのことでか、王妃は伯爵に
呼ばれて2人の元へ話をしに行った。
「アインス兄様は失恋のショックで
寝込んだ--と思うけどね俺は!!」
なんてリヒトは言ってたけど‥
あまりそういう想像できないな 笑
王妃が戻ってくると、ずっとアインスを
心配していたカイ王子が様子を尋ねるが‥
「アインスに会うのは…エルンストに
聞いてみた方がいいかもしれないわね。」
そんなに状況って良くないのかな?
詳細はわからないけど、ろくに
会話をしないまま退席して部屋に
戻りこもってしまったらしかった。
何らかの事情できっと仕事にも支障が
出ている、ハイネと同様に王子を国王に
するために力を尽くしている伯爵も苦労
してるのではとハイネは心配していた。
そんな時、随分と顔色の悪かった
伯爵は突然倒れてしまった。すぐ
そばにハイネがいたため、一先ず
ハイネの部屋のベッドへ運んだ。
その意識を手放している間に昔の
夢を見ていたのかもしれないね。
幼いアインスと、反抗期真っ只中
といった感じのエルンストくん←
勉強が大嫌いで、天才と呼ばれている
アインスに運動で勝負を挑んで勝てば
褒めてもらえるかもと日々勝負を挑む。
そんな彼に、教養をつけ見返したいとは
思わないのか、そうアインスは言った。
‥アインスが言ってる教師って多分
ハイネのことだよね?この言葉も、
ハイネならすごく言いそうだなと。
この時のアインスの言葉をきっかけ
として彼はその後アインスの教育を
受けて努力、努力、努力‥その結果
親を見返し、べた褒めされたようだ。
その時のことがきっかけだろうな。
実際アインスは天才と言われてるけど
努力の天才で、それをそばで見ていた
彼だからこそより一層、アインスが
治めるこの国を見たいと思ったんだ。
そんな強い意志で侍従長を務めるに
至った彼の行動が、ここまで歪んだ
ものになった経緯はやはり不明だ。

伯爵の症状はおそらく過労によるもの。
いろいろと苦労はしてるんだろうけど
ハイネには弱みを見せようとしない。
相も変わらず厭味ったらしいというか
ハイネに対しあからさまに敵意を向ける。
そんな彼に、自分達の立場はあれど
はっきりとした意志を持って教師を
している自分にとって伯爵は決して
敵ではない‥言いたいことはそれだけ。
でもその時に伝えた言葉はあの時
アインスが言っていた教師に聞いた
その言葉そのものだと伯爵は気づく。
やっぱり、そうだよねきっと。
伯爵は同じ場所を目指す敵以前に
ハイネの存在を毛嫌いしている
って部分のほうが強く感じる。
殺人未遂の件が執着した時もすれ違い
際にひどい言葉をぶつけてきていた。
「下水のネズミが…うまく
潜り込んだものです。」
深くは触れていなかったけど伯爵は
5歳の頃までは貴族ではなかったと
いう話もあって‥ハイネへの態度と
何か関係があるのかも知れないね。
まだまだ謎が多いし抱える闇も多そう。
ハイネを毛嫌いしている感じは最初の
王子達と似てる気もするけど、伯爵が
ハイネに心を開く日は来るんだろうか。
もし来るなら‥彼の抱える闇からも
ハイネが救ってくれたらと願う。
~ひとこと~
いやぁ‥一先ずハイネの件に関しては
周囲には秘密にしているという点では
相変わらず少々の不安は残るけれど、
王子達とハイネの絆が再確認されたという
面では一件落着と思っていいでしょう。
今巻でアインスやローゼンベルク伯爵
の昔の話が僅かですが描かれ、伯爵の
決意や思いの理由も知ることが出来た。
ただやはりまだ謎な部分は多いまま、
アインスの引きこもりの件は何も
わかっていないし伯爵のやり方の
理由も‥今後また何かしてくるか
今はまだなんとも言えないけれど、
あの時アインスが言っていた言葉が
ハイネの言葉だったかもしれないと
知った彼が今後何を考えるでしょう。
一先ずはそれ次第でしょうか。
‥どうか、好転してってくれ。
いつもすごいハラハラする 笑