著:赤井ヒガサ 先生

ローゼンベルク伯爵からの言葉は
跳ね除けていたリヒトだったが、
その後もはっきりした答えを出せず
ブルーノともちゃんと話をすること
も出来ないままでいる様子だった。
父親のようになりたいというのも、
オーナーの生き方に憧れているのも
どちらも本心で‥自分が本当は何を
目指したいのかわからずにいた。
でも、ようやく本当に自分が
やりたいことは何なのか気付く。

王宮を出て暮らしながら、自分の
好きなこと、カフェでの仕事をする。
そのためには、14歳の少年一人では
出来ないことの方が多すぎただろう。
そこで頼ったのはローゼンベルク伯爵。
「俺(王子)が王宮を出て暮らすため
にあんたはどのくらい協力できる?」
すると‥伯爵はどこまでも
助けてくれそうなことを言う。
タダで住める家を手配し、物件の
管理人ということで住んでもらえたら
給料も出すから生活費にするといい。
なんて‥とてもありがたい話では
あったんだろうと思う。それでも
リヒトは出て甘えた生活をするために
王宮を出ようとしているわけではない。
いろいろとプランも考えた。
どれくらいのお金が必要だとか、
実際に済む物件を自分で探して
みたりだとか‥限界があった。
家賃はちゃんとリヒトが払う、
伯爵に頼りきりというような
ことには絶対にならないように。
そんな条件込で、家の手配を頼んだ。
頑張らなければいけないのはこれから
‥やっと自分の気持が定まったんだ。
ハイネも、彼を応援してくれてる。
次は父親をどう説得するか‥だね。

「俺…っ、王宮を出て
街で暮らしたいんだ。」
「無理言ってるのはわかってる。
お金とか住む場所とか、自分でなん
とか出来るように計画も立てたんだ。
だから…っ、王宮を出ることを許可
してください、お願いします!!」
そんなリヒトの真剣な態度を見て、
計画をまとめた書類を受け取った
陛下は、少し考える時間をくれる
ようにと言った。最後の最後まで
誠意を伝えようと一生懸命だった
リヒト‥ちゃんと思いが届くといい。

「待たせてしまったがリヒト、
王宮を出て暮らすことを許可しよう。」
リヒトの真剣な思いが届いたね。
「引き続き王室教師殿
の授業は受けなさい。」
まだ14歳の少年、今後のために
勉強しておいて損はないというか
しておかないと困るからと授業は
引き続き受けるということを条件
にリヒトは無事許可をもらえた。
おめでとう!!
これから頑張らないとね!!

リヒトが王宮を出ていくという
報告をする。改めて、ブルーノに
謝罪の言葉を告げたリヒトだったが、
「師匠がご納得されているの
なら自分はそれでいい。」
なんて言って立ち去ってしまった。
でも、ブルーノの表情からはもう
怒っているという感じではなく、
何か別に思うことがあるような
複雑な感情があるように見えた。
これまでもこれからも、ハイネは
こうやって王子達の背中を押して、
どんな選択をしようとも王子達の
本当に望むことを応援してくれる。
ほんと‥最高の王室教師様だ。
要は王子の覚悟とやる気次第。
逆に言えば、本気でやる気が
あるなら背中を押してくれる
存在がいれば自分で決められる。
王子達、強い人に育つよ。

リヒトが出ていって、まだ日は
浅い‥ある時ブルーノは突然に、
「--自分は、王宮を
離れようと思います。」
彼が憧れていたドミトリー教授、
彼から留学のお誘いを頂いたらしい。
以前は断ったが、今回のものは学者
の道を勧めるものではなく王子として
国際交流の一環も兼ねての話だという。
「…師匠がリヒトに言った言葉…自分も
新たな学びのチャンスをいかし、より
よい国王候補を目指そうと思います。」
レオンハルトはブルーノが大好きだ。
大好きな兄様が遠くへ行ってしまうと
(物理的にw)引き留めようとしたが、
ブルーノがずっと抱えてきた思いを
聞いて、レオンハルトも考え直す‥
「1週間めいっぱい一緒に遊ぼう。
昔のように、しばらく離れて
いても寂しくならないように。」
旅立つ日までの1週間、体力バカの
レオンハルトが満足行くまでに遊び
倒して‥旅立ちの当日、ブルーノは
へとへとだったが笑顔で旅立った。
寂しくなるけど‥頑張れレオンハルト。
そしてブルーノも頑張っておいで。

「俺も王宮を離れようかと思う。」
‥今度はカイ王子。
何この立て続け(笑)
カイ王子のこの話は軍学校で行われる
遠方での訓練に参加したいということ。
期間は1ヶ月程‥食べる物も寝る場所も
特別扱いは出来ないので、王族は特例で
不参加でも構わないの言われてたらしい。
行っても気を使わせて迷惑になるなら
やめておこうと思っていたようだけど、
不安がっているエルマーを支えたい。
そうでなくとも今回の訓練はとても
勉強になるいい機会なのだという。
でも兄弟達が立て続けに出ていって
しまったこの状況で、レオンハルトを
残していくのも心配だと迷っていた。
大好きな兄様のためだとブルーノを
見送ったレオンハルトだが、やはり
落ち込みが激しすぎて言い出せない。
「俺はずっと王宮にいる、大丈夫だよ…」
レオンハルトが心配だったんだろう。
訓練に行くのを諦めようとした。
でもレオンハルトが部屋を出た
あとハイネと話している内容を
レオンハルトは聞いてしまった。
そこで‥やっぱり辛かったと思う。
それでもカイ王子を応援しようと、
背中を押そうと思えたのは彼の成長。
レオンハルトも少しずつ変わってく。
ただのわがまま坊から大切な人達の
ために時に我慢をして、応援しよう
と思える子に変わってきている。
まだ、涙は堪えらんなかったけど(笑)
半泣きでぷるぷる震えながら笑顔で、
カイ王子の背中を押してくれて‥
カイ王子も、王宮を出ていった。
レオンハルトはそれを笑顔で見送る。
「少し大人になりましたね。」
なんてハイネは言う。
「ブルーノ兄様にいい子でいるよう
言われてるし…だいたい…一人の人間と
してその人の幸せに繋がるか考えろって
僕にそう言ったのはお前だろうが!」
時に、教師のハイネが驚くほど
どんどん大きく強く成長してく。
~ひとこと~
王室教師ハイネ9巻でした。
王子達、どんどん離れていきます。
ハイネの元から遠ざかっていく。
リヒトとブルーノに関しては
離れても彼の授業は受けられる
環境を作るということだったが、
カイ王子に関しては終わるまでは
ストップすることになるのかな?
(リヒト王子の自立、ブルーノ王子
の留学、カイ王子の訓練、全てご本人
の意志。しかし立て続けに訪れる
ことに意味があるのだとしたら…)
ハイネはそんなことを考えていた。
意味‥意味があるんだろうか。
今回のことは影で誰かが動いて
いるにしては大掛かりすぎるし。
偶然が重なったのかなと‥もし
またかげで伯爵が動いていたり
するなら、彼の目的が何なのか
本当にわからなくなってきた(笑)
とはいえこれは私の勝手な
仮説です。真実はまた続きで
明かされていくかな‥??
偶然なのか何なのか、王宮に
一人残されたレオンハルトも
心配だし一先ず続き気になる(笑)
それではまた10巻で!!