王室教師ハイネ 第4巻

著:赤井ヒガサ 先生

「本日は美術を身近に感じて
もらうため、皆様にアデル
姫の絵を描いて頂きます。」

「完成した作品はアデル姫に
最優秀賞を一つ選んでもらいまして、
見事選ばれた作品はご褒美として
国立美術館に1週間飾られます。」

そんなところから始まった授業‥王子
達の絵はそれぞれとてもユニークだった。
リヒトは普通に上手な絵だったけど(笑)

それらを見たアデルはとても
嬉しそうな笑顔で喜んでくれた。

「だってカイ兄様のは色がきれい~
ブルーノ兄様のはすっごく細かいし
レオンハルト兄様のは可愛いっ
リヒト兄様のは上手だし、アデル
全部好き!ありがとう兄様!」

アデルは本当にきれいな心の
持ち主なんだと感じた瞬間だ。

そんなアデルを見て、王子達は頑張って
描いてよかったと改めて思えたみたい。

でも最終的に選ばれた1枚は‥

「だってセンセーがアデルの
こと描いてくれたんだもんっ。」

まさかのハイネが描いた絵を選んだ(笑)
何でも出来るハイネだけど、絵だけは
無理だったという彼‥王子達の絵と比較
しても‥多分1番残念なんじゃないかな‥

ほんと、アデルは清らかな心です♡笑
この後1週間生き恥を晒されるハイネ
だったが世間の人々の評価とは‥

(あの王室教師殿が描いたのだから理解
できなかったらバカだと思われる…)

なんて思考のせいでおもしろいことに(笑)

「こ、この丸は宇宙、この線は
人類を表しておりつまりそれは…」

「いや違う、私の解釈は
文化と風土のつながりを…」

一見知識人を中心に大好評だった(笑)

勉強が嫌いで、それでも夢のため
嫌々ながら一生懸命勉強をしてきた
レオンハルトだったけど、少しずつ
自分から知りたいという気持ちが
芽生えるようになってきたようだ。

知ることの楽しさ、知りたいから
勉強すると思えたならきっと、彼は
どんどんいろんなことを覚えていく。

今後が楽しみになってきたね。

「教えてよ、センセーの秘密。
センセーは俺の秘密知ってるんだ
から、これでおあいこでしょ…?」

ハイネが来たばかりの頃から、リヒトは
妙にとハイネについて探っているような
様子があった‥でも最近はそこんとこは
大人しくしてたのに‥続いていたらしい。

決着をつけようとしたミニゲームで、
買ったのはハイネ。発想はリヒトも
ハイネに負けていなかったと思うが、
それでもハイネの方がウワテだった。

結局真実を語ることはなかったハイネ
だったけど、もしかしたらリヒトなりに
ハイネを心配している部分もあっての
ことだったのかもと少しだけ思った。

警戒すべき相手だと感じていたリヒト。
もしかしたらこの先信頼できる生徒に
なっていくこともあるのかもしれない。

国王候補としての仕事を学ぶため
陛下の仕事の手伝いをすることに
なったレオンハルトとブルーノ。

どんな仕事をしても、中々上手く
出来ずにいたレオンハルトだった。

そんな中陛下との謁見が行われる。
そこにやってきた商店の店主だと
言う女性が資金援助を願い出た。

国から市商店への資金援助はそう
簡単なものではなく応えられない
可能性が高いと話が進む中で‥

「お前だけじゃなくて近所の店も
みんな金に困ってるんだろう?だったら
みんなで解決すればいいんじゃないか!?」

「みんなで毎月でも少しずつ
金を集めといて、誰かが困った
時そこから出すんだ。」

そんな発想を思いついたのは、
自分が大好きなトルテを少しずつ
ためおいてまとめて食べていると
いう話が発想元だったんだけど(笑)

レオンハルトは難しく考えることが
苦手な分率直な考えを導き出せる。
いろいろ考えすぎる人には出せない案
なんてのも思い浮かぶのかもしれない。

運動以外苦手と思われていた彼
だが、まだまだ隠れた才能が
たくさんあるかもしれないね。

レオンハルトの思わぬ発想で
陛下からお褒めの言葉がかかる。

「…ずっと僕の後ろをついて
くる弟だと思っていたのに…。」

でもそれはブルーノにとっては
焦りに繋がるものだったようだ。

昔から、とにかく1番になりたくて
勉強し続けてきたのには第一王子に
ついての評価が大きく関わっていた。

ハイネによって国王候補として教育
されている4人の王子達ではあるが、
それでも第一王子が次期国王になる
だろうという世間の目は相変わらず。
ブルーノ達が幼いからそれはずっと。

それでも幼い頃からずっと憧れた。
父上のような立派な国王になりたい
という思いのため、兄に負けない
自分になれるよう努力してきたのだ。

それが今になって、自分を簡単に
追い越していってしまいそうな
一面を見せた弟の存在に恐怖を
覚えてしまったのかもしれない。

今はまだ仲のいい兄弟‥でも
いつかは国王候補として競う
仲として殺伐とするのかな‥

仕方のないことかもしれないが、
それは少し寂しいと感じてしまう。

レオンハルトのこともあって焦りから
論文に集中できずにいたブルーノ。
そんな中で書きあげた論文は随分と
詰めが甘いものになってしまっていた。

「2週間後の発表の前にこの論文を
完全なものにして私に見せなさい。
もし私の納得するものが書けなければ
貴方を…私の弟子から破門します。」

落ち込みながらも一生懸命勉強して60点
という点数を叩き出したレオンハルトの
ようになることを想定しての発言だった。
もちろん弟子などとった覚えはない(笑)

でも結果、ハイネから弟子として期待
されていると感じたブルーノは精一杯
集中して最高の論文を完成させてきた。

緊張しつつ挑んだ発表は称賛を浴びた。
ブルーノがずっと憧れていたらしい
ドミトリー教授も評価してくれて‥

「この国を離れて私の元で
学者を目指すつもりはないかい?」

突然の誘いだった。誘い自体は
嬉しかったのではないだろうか。
でもその後に言われた現実は厳しい。

こんな誘いが来たのはブルーノの
実力だし教授の言った言葉も正直
言って最もなことだったろうと思う。

でも、この話の影で‥実は例の
伯爵が動いていたらしいんだ。

エルンスト・ローゼンベルク、
第一王子アインスの侍従長を
務めているとハイネに名乗った。

教授にブルーノのことを話した
のはこのローゼンベルクだという。

ブルーノがどんな決断をしようとも
それは彼の決断、何も問題はない。
でも伯爵の手のひらで転がされてる
気がしてしまい少し不安がある。

教授の誘いについてブルーノは迷った。
とても魅力的な誘いだったろうと思う。
それでも国王になることを夢見てずっと
頑張ってきたわけで、そう簡単にその
夢を捨て去る覚悟もなかったんだろう。

この誘いを受けるべきかもしれない。
それでも自分は国王を目指したい。

そんな、迷いだったんじゃないかな。
可能性の低いものを目指す不安は
きっといつまでも拭いきれないだろう。

そんなブルーノにハイネは助言した。

「たった一度の貴方だけの人生、思いの
まま生きることに理由は必要でしょうか。
--ようは、貴方の覚悟しだいですよ。」

いつか遠い未来、死ぬ間際になって後悔
しても時間は戻ってはくれないのだから、
ダメだったとしてもいま全力で頑張る覚悟
があるのかどうか‥ということだろう。

ずっと迷っていたブルーノだったけど、
その覚悟、ちゃんと決めたようだった。
誘いを断り、あくまで有効的に今後の
話をしていた。次期国王候補として。

心が定まったブルーノはすごいぞ‥!!
ほんと、どの王子達も今後が楽しみだ。

~ひとこと~

いろいろと上手くいかないことも
ありつつ、ハイネや兄弟達と共に
決断をして前に進み続ける王子達。

それを邪魔しようとするローゼンベルク。
彼の思惑を失敗させ続けたのには
ハイネの存在はきっと大きかった。

「王室教師ハイネ・ウィトゲンシュタイン
彼の素性を徹底的に調査してください。」

なんて話が出ているようだった。
王子達の次はハイネ。まだ明かされぬ
ハイネの過去というか‥ハイネが
隠し続けていることがそろそろ
明かされるのかもしれないね。

それでは、また5巻で!!