王室教師ハイネ 第2巻

著:赤井ヒガサ 先生

「本日の授業は首都ウィンナーへ赴き
国民の生活を知る社会科見学です。」

というわけで、街にやってきた王子達。
もちろん王子とはバレないよう変装して。

庶民の生活には不慣れな王子達なので、
特にレオンハルトなんかには学力的にも
不自由が多かったが、そんな状況でも
頑張って買い物をしてみたりしていた。

観光のような感覚でしばらく街を
満喫していた王子だったがそんな時‥
スリが現れ、孫連れのおばあさんを
突き飛ばしバッグを奪って逃走した。

とっさにカイ王子がダッシュで追い
かけ、バッグも取り返したし犯人も
捕まえてくれてそこは一件落着した。

解決したのはカイ王子だけど‥ほんと
いつもほわほわしてるカイ王子が俊敏に
動いてて面白くて仕方なかったけど(笑)

レオンハルトも実は追いかけようと
した。彼なりにおばあさんのために
必死になろうとしていたんだよね。
ほんと、優しい子なんだよね彼も。

おばあさんが、お礼にと4人に
お菓子をくれた。庶民の世界で
ある嫌なこと、そしていいことの
両方を知る機会になったろうな。

社会科見学で王子達それぞれに
思ったこと、感じたことがあった。

自分が王子になったら‥というのは
まだ漠然とした思いかもしれないが、
それでもこの街を知り街に住む多くの
人々のために、この国のために自分は
こうしていきたいという考えを持てた
ことは彼らにとって大きな成長だろう。

国王陛下‥王子達の父親が戻ってきた。
父親としては、息子達が可愛くて仕方
ないんだなといった感じの親ばかっぷり
が見て取れたが、国王としてはそれ
だけではいられないのも事実だった。

ハイネが来たばかりに王子達に
受けて貰った学力テストの結果‥
レオンハルトだけ1点という酷い
点数だったのを国王も把握してる。
王位を継ぐ者がこれではいけない。

「3日後もう1度この実力テストを
受けなさい。それでリヒト以上の点数、
60点以上をとれなければレオンハルト、
お前の王位継承権を剥奪する。」

国王からのその言葉に、レオンハルトは
酷く落ち込み、でも勉強ができないこと
をとても悔しいと感じたようだった。

「いいえ、貴方はまだ立ち上がれ
ます。本当に終わりなのは悔しい
気持ちすらもなくなった時です。」

ハイネのその言葉で、レオンハルトは
一生懸命に勉強をすることにした。
でも‥彼の学力は本当に初歩的なものも
全く理解できないレベルからだった。

一先ず‥『1+1=3』とか、考え直しても
『1+1=11』とか答えてしまうレベルだ。

いろいろな発想で勉強法から考えて、
それで少しずつ点は上がるもののまだ
60点には全然満たない‥そんな現実で
逃げそうになってしまうレオンハルトを
やはりハイネはどこまでもプラスに考え
レオンハルトにやる気を出させ続けた。

勉強が嫌いな彼だけど、きっと元から
真面目な子ではあったんだろうと思う。
いい先生に出会えて‥初めてそれが
開花した感じになっているけどね(笑)

そして再試験当日‥

「結果は--59点だ。」

これまでの彼からは考えられない高得点に
喜んでしまう王子達だが、先に条件として
提示された60点には満たない結果だった。

それでも、最初に1点のテストの時の
採点方法を採用すると‥名前をちゃんと
書いてあるからもう1点プラスになる‥?

国王は、そう言うと60点と書き直した
答案用紙をレオンハルトに返却した。

国王‥甘いなぁ~♪笑

でも、今回本来なら1点も取れなかった
レオンハルトが本気で努力したのは事実。
その努力ごと認めてもらえたようで、
ほんと心から良かったと思えた。

その夜‥謁見時刻はとうに過ぎた時間
に、ハイネが国王に謁見を申し出た。
1度は断ろうとするも、それがハイネ
だと聞いた陛下は謁見を許可したのだ。

「久しぶりに2人で飲み明かし
ましょう。ヴィクトール。」

陛下の名前を親しげに呼ぶハイネ。
陛下とハイネは、過去にどこかで
会っている‥それも冗談を言い合える
くらいに親しい関係だったのだろう。

ここではまだ明かされない話だが、
ハイネが王室教師としてここに
やってきたのには、その昔の話が
関わっているんだろうということ。

ある時、ハイネのもとにカイ
王子が相談を持ちかけてきた。

「王宮の人達と話せるようになり
たくて…いつも…ただ見てるだけで…。」

「なんだか勝手にイメージを
作られてる気がして…。」

兄弟達やハイネとは普通に話せるが
王宮の人達からはやはり勝手に怖い
印象で見られ怯えられてしまうため、
カイ王子自身も話しかけたら更に
怯えさせてしまうかもと話しかける
ことも出来ず悩んでいるようだった。

次の日から、他愛もない会話をして
みようといろいろ試してみるも、
だいぶコミュニケーション能力に
難ありのようで結果上手くいかない。

そんな王子を見ていてハイネは気付く。
雑談以前にあいさつもあまりちゃんと
していないのではないかということに。

あいさつやお礼を言うところから、
やってみたらいいのではないかと。

「一人や二人で諦めてしまうのは
とても勿体ないことだと思いますよ。」

そんなハイネの言葉で、怯えさせたく
ないと怖がりつつも勇気を出した。

「……あ…ありが……とう…。」

そうしたら、ちゃんと気持ちが伝わった。
怯えるのではなく笑顔を向けてくれた。

カイ王子の必死の努力はちゃんと届いた。
既についたイメージは何もしなければ
変わらないままだったかもしれないけど、
こうやって少しずつでも頑張ってみれば
カイ王子を理解してくれる人はきっと
この王宮にもたくさんいるんだろう。

頑張れ、カイ王子!!

ブルーノとリヒトが盛大に喧嘩をした。
元々、不真面目な所が多いリヒトと
真面目過ぎるブルーノは相性が悪い
のかもしれないが、今回は酷かった。

「なんであんたみたいな
のが俺の兄貴なんだろう!」

言われて酷く辛い表情を見せたブルーノ、
それを見て言ってしまったことに気付き
リヒトも後悔の表情を見せはするが‥

ケンカをしている最中ってすぐに
謝れないのが人ってものだろうな。

でもその時思っていたのは、お互いに
言い過ぎた‥という後悔だったようだ。

喧嘩の原因は本当にくだらないこと。
タイミングが悪かっただけに思えた。
それでお互いカッとなって言い過ぎた。

「こんな頭ごなしに怒る兄じゃ、
リヒトにああ言われても仕方
ないかもしれませんね…。」

「…ブル兄ぃにひどいこと
言っちゃった。本心じゃない
のに頭にきてたからつい…。」

同じ反省の思いを抱えていても、
すぐに謝ろうと思ったブルーノと
気まずさで逃げてしまったリヒト。

もしかしたら許してもらえないかもと
いう恐怖だってあったのかもしれない。

でも、遅い時間になっても帰って
こないリヒトを心配してブルーノは
自ら探しに行こうとしていたのだ。

「どんなに腹が立ってもケンカ
してもあいつは大切な弟なんだ…!」

その言葉は王宮の敷地内でうろうろ
していたリヒトのもとにも届いた。

この言葉のおかげか‥ちゃんと謝る
覚悟が出来たようでこのケンカは
無事仲直りが出来て終わった。

こういう所も‥少しずついろんな
経験をして成長していくんだろう。

王宮の敷地内をうろついていた
リヒトを見つけたのはハイネだった。

そこで素直に謝ればブルーノも
許してくれるという話をした時、
人の気持ちなんか誰にもわからない
とリヒトはそれを突っぱねたんだ。

それが、ハイネの中ではずっと
引っかかっていたようだった。
わからないから逃げていたら何も
解決しないし、今回はブルーノの
気持ちが伝わってきたから謝る
勇気が出たのかもしれないけれど‥
今後もその調子じゃ不安は大きい。

ハイネは何か行動に出るんだろうか。

~ひとこと~

王室教師ハイネ2巻でした。
今回はレオンハルト、カイ王子が
大きく成長を見せた話があった。

2巻のラストの話から‥次巻では
リヒトにスポットをあてた話が
描かれていくのかもしれないね。

4人ともいろいろと苦手分野はあるも、
それぞれにすごくいい人であるのは
このお話を読んでいけばわかること。

ハイネの存在やいろいろな経験を
通して、そんな彼らがいい方向に
変化成長していけたらと願います。