著:ワザワキリ 先生

気配を辿ったその先で
アオイさんは生きていた。
でも会話ができないどころか理性
を失った大きな猫といった感じで、
安否を確かめようとして声をかけた
安倍さんに襲いかかってくる始末。
「アオイを威光で抑える。
その隙にお前は逃げろ。」
寄生樹に祟られているにも関わらず
アオイの妖力は強く、一時的に威光で
抑えたとしても安倍さんも逃げられる
という保証はなかったかもしれない。
それでも理由をつけ、芦屋が避難
したのを確認したら自分も逃げる
からと先に芦屋を逃がそうとした。
不安な気持ちの方が大きかったと
思うけど、今芦屋が動かなければ
安倍さんは動いてくれないだろう。
(大丈夫…安倍さんなら…大丈夫…。)
自分に言い聞かせるように、芦屋
がその場所から逃げようとした時‥
「大丈夫じゃないからそこどけ…花繪。」
榮の声がして芦屋が意識を手放した。
芦屋の身体で榮は、威光を使い
アオイさんを抑えようとする
安倍さんの手を掴んで止めた。
威光を使ったら消える‥榮はこれまで
何度も現れていたけど実態はなかった。
芦屋だったり蝶だったり、何かの体を
借りることで存在できてるみたいな‥?
血筋とかがあったとしても普通の人間
だったろうし、そんな彼が今のような
状態になった原因が明かされるのかも。

「『消えろ』と唱えると妖怪が
霞のごとく消滅するように…威光を
放った状態で寄生樹に憑かれた妖怪に
触れればお前の肉体は消滅する。」
榮はそう言っていた。
少しすると、遊び疲れた猫の
ようにアオイさんは大人しく
なりそのうち眠りについた。
安倍さんにはその場で出来る手当て
をして、アオイさんのいる場所から
離れて安全なところへ移動すると、
安倍さんはいくつか質問をした。
まずアオイさんは死んだと
嘘をつく必要があった理由。
これについては、アオイさんの遺言で
あり榮に課された命令だったという。
樹海からこの場所への道を封じていた
のもそれによるものだったらしい。
そしてもう一つ‥人間であったはず
の榮が今こうして存在している理由。
「オレは…かつて”芦屋榮”の肉体を
宿主として寄生していた威光だ。」
彼はそう答えた。
そしてこれまでのことを
いろいろ教えてくれた。
致命傷を負った榮は威光をアオイさん
に取り憑かせ、榮の肉体は消滅した。
その後アオイさんは、おそらく榮に
化けて芦屋家を訪れその時まだ幼い
芦屋に威光を取り憑かせようとした。
でもそれは途中で失敗に終わり、
残された威光を一匹の蝶に移植し
最後の命令を与えたのだという。
情報量、いきなり情報量が‥ 笑
これはさほど重要なことではない
のかもしれないけど、ずっと芦屋の
そばにいたのは、父親の榮自身では
なかったんだなとわかってしまった
ことが、少しだけ寂しく思えた。

榮(の威光)の意識で動いて
いる間、芦屋は夢を見ていた。
その内容はおそらく榮の記憶。
その内容から、芦屋は寄生樹
を治す手段に気付いていた。
榮の肉体が消えてしまった瞬間、
威光をアオイさんに取り憑かせた
時確かに、アオイさんの手に根を
張っていた寄生樹が消えていた。
それが一時的なものかどうかは謎だが
一時的にでも消すことが出来たなら
完治は無理でもギギギの親分の時
みたいに対処できるかもしれない。
でもその代償として威光を使った
人間の肉体が消滅してしまうのは‥
この話をしたら安倍さんはアオイ
さんや妖怪達のために自分を犠牲に
してでも威光を使うかもしれない。
守りたいもののために他の大切な
ものを犠牲にしなければいけない
かもしれないなんてつらすぎる。
それでも芦屋は伝える覚悟を決めた。
「もしもこの夢が現実に起きた
光景だったなら、アオイさんの
寄生樹は威光で治せます。」
芦屋の話を聞いて、安倍さんは後悔
にも似たような言葉を吐き出した。
アオイさんのそばには安倍さんがいた。
アオイさんが寄生樹に憑かれた時に
安倍さんが威光を使っていたなら、
アオイさんが現状のようになって
しまうことはなかったかもしれない。
でもそんなことはしたくなかったから、
きっと榮の肉体が消滅してしまったのも
偶発的な、事故のようなものだったから
誰にも言わず樹海に入る決断をしたんだ。
だったらもう、決して同じことを
繰り返してしまってはいけない。
繰り返したらまたアオイさんが
苦しむことになるんだろうから。
どうにかしたいのにどうしたらいいか
わからない‥こんな弱々しく苦しそう
な安倍さんは初めて見たかもしれない。

詳細説明は端折ってしまうけど
夢で見た内容から、芦屋に移植
された威光をアオイさんに返還
すれば、アオイさんの寄生樹は
封印されるはずだと考えた。
蝶と芦屋に半分ずつになっていた
威光が、夢で榮と対面した後で1つ
に合わさった感覚がしたと言う。
それを全てアオイさんに返すこと
が出来たなら、寄生樹を封印する
というのは可能なのかもしれない。
とはいえ‥寄生樹に憑かれた妖怪に
威光を使ったら肉体が消滅すると
いう問題は何も解決していない。
ただ一人でどうにかしようとする
安倍さんに、他の手段だってある
と伝えたくて、芦屋は自分に威光の
使い方を教えてくれるよう頼んだ。
芦屋は芦屋で守りたい者達のために
出来ることをしたかったんだろう。
安倍さんが使うにしろ、芦屋が
使うにしろ‥もし威光で肉体が
消滅するという大きな問題を回避
する方法がわかればアオイさんを
助けることが出来て、最終的には
隠世を守ることにも繋がるんだ。
やってみて損はないだろう。
芦屋の提案に乗ることにした。

芦屋の意識を保ったまま威光を操ると
いうのを目標にいろいろ試してみた
けれどどうにも上手くいかなかった。
榮に協力してもらうしかないか‥
というところに辿り着くけれど、
結局は威光の使い手が消滅する
問題を解決しないことには絶対
協力してくれることはないだろう。
「寄生樹×威光=消滅、なぜこの方程式
になるのか解明できればリスク回避
の算段も立てられるんだがな…。」
そんな安倍さんの言葉に、芦屋は
寄生樹の薬を作ったコウラなら
その答えに繋がる何かを知って
いるかもしれないと考えついた。
確かに可能性はある。
少しずつ、明るい未来が
見えてきた気がする。
アオイさんが助かって、また
アオイさんと話ができるような
状態まで回復する未来への道が。
その先にもいろいろあるのはわかってる
けど、ずっとアオイさんのことを思って
いた安倍さんのためにも、まずはそこに
向かう道の可能性が出来たことが嬉しい。
あと‥
心配しすぎて大きくなってたモジャが
現状の打開策が見つかった途端いつも
のサイズに戻ったのが可愛すぎた 笑

寄生樹の薬について話そうとしない
コウラだったけど、完治の可能性が
あることを知ると決して情報を口外
しないことを条件に薬を生成している
研究室に連れて行ってくれることに。
その場所は亀薬堂の地下深くにあった。
その理由は‥冷凍保存してある寄生樹。
最初は薬の実験台として使っていた
ものだけど、最終的には薬の原料に
なっているようだった‥そりゃあ、
簡単に話せることじゃないわ 笑

コウラは一通り製法を説明すると
薬の効果を見るための実験を始め‥
①寄生樹が【薬】に取り憑く
②【薬】が寄生樹に取り憑く
③寄生樹は【薬】を外敵とみなす
④毒の樹液を分泌して攻撃
⑤発熱し発火して自滅
一通り仕組みを教えてくれた。
それを威光に置き換えて考えた
末、榮が消えてしまった原因は
樹液の可能性が高いとわかる。
アオイさんに取り憑いた寄生樹が
榮が消える直前威光を放った榮の
手にも根をはやし取り憑いていて、
その威光を外敵とみなし攻撃した
ことによって榮の肉体は消滅した。
「つまり寄生樹に取り憑かれなければ
威光を使っても消えたりしない。」
‥という、これはまだ仮設だった。
外敵とみなされ樹液を出されて
触れてしまったら消滅してしまう。
「薬を使用した直後の寄生樹は
過剰分泌と発火によって樹液が
枯渇してるから、この枝もしばらく
の間は樹液を分泌できないわァ。」
寄生樹に憑かれる原因となっている
樹液に触れずに威光を使えれば、
消滅せずに寄生樹を消せるかも‥
あくまで仮設、立証なんて出来て
ない状態で下手したら消滅してた。
安倍さんは先程実験に使った枝
に威光を使い、消そうとして‥
消すことは出来なかったけど
自分が消滅することなく攻撃
しようとする寄生樹を鎮めた。
実験に命がけやめてほんと怖い。
でも大丈夫だった‥よかった‥
完全には消せなかったしこれと
同じことを再現するにはアオイ
さんの状態は進行が進みすぎてて
難しい気がするけど大きな進歩。
これなら‥榮が協力してくれる
可能性もあるのかもしれない。
アオイさんを治せるかもしれない。
~ひとこと~
うわぁあああああああって感じです 笑
今巻でほんといろんなことが、お話が
一気に進んでって、まずアオイさんが
生きてて治せるかもしれない可能性も
出てきて、いっきに増えまくった情報
を理解しながらレビューをしていたら
ものすっごい説明しまくりの長文に
なってしまいました、すみません‥。
本当は簡潔にまとめた上であとは
コミックをお手にとって読んで
もらえたらというつもりで書いて
いるのに情報過多ですみません。
好きなお話ほど暴走します困った 笑
本当に心から大好きな作品なんです。
彼らが、彼らの守りたいもの達が
今後どうなっていくのか‥きっと
今この場所に芦屋がいなかったら、
芦屋と出会っていなかったら安倍
さんはきっと自分を犠牲にしてた。
芦屋がいるから、きっと誰も
傷つかない最善を探していて、
きっと見つけることが出来る。
そう信じて次巻を待ちたいです。
もしかしたら想像しているほど
簡単な話じゃないかもしれない
けど‥大丈夫であって欲しい。