不機嫌なモノノケ庵 第16巻

著:ワザワキリ 先生

お姉さまからの素敵なクリスマス
プレゼントは親子3人での温泉旅行、
でもその旅行の日程は大晦日と元旦。
冬休みの間は連日アオイさん捜しの
予定になってる..そんな中で入った
家族旅行をどうすることにしたのか
わからないまま日々の捜索は続く。

ただ、旅行の話が出た次の日から
なぜか芦屋は捜索活動に対して
気合が入りすぎているというか‥
2人分のお弁当を用意してきたり
妙に安倍さんに対して気遣いを
見せてきたりと様子がおかしい。

何より目についたのが、ずーっと
張り付いたような笑顔をしてたこと。
実際捜索は真面目にやっていたし、
問題はなかったのだけどそんな中‥

捜索6日目、芦屋がひそひそと物怪庵
に話し、物怪庵がOKと掛け軸に記した
ところを安倍さんは見逃さなかった。

何を了承したのかと尋ねてみても
何でもないなんて芦屋は誤魔化す。

「見逃してやろうかと思ったが…
その浮ついた笑みはどうにもいけ
好かねぇ。何でもなくねぇんだろ?」

これはもう逃げられないと察した
芦屋は覚悟を決めて声を上げた。

「大晦日と元旦!!家族
旅行に行ってきますっ!!」

思いも寄らない宣言に拍子抜け
したのは安倍さんの方である 笑

芦屋が出した答えは、家族旅行には
行くけれど捜索は休まず行うこと。
大晦日は捜索後に現地に向かって
家族と合流し元旦は急いで帰っても
捜索開始時刻(9時)に間に合わない
ため物怪庵に宿泊先まで迎えに来て
くれるように依頼していたみたい。

それに対する答えがあのOKだった 笑
大事な時期に遊びに出かけることを
後ろめたく思って、その程度の覚悟か
と幻滅させるかもなんてことも考えて
しまい言い出せずにいたようだった。

でも安倍さんそんなおっかない
人じゃないから‥というか芦屋
と出会ってからこういうことを
言える人になった気もしてる。

人を嫌い妖怪を助け続けていた頃
の彼のままだったらもしかしたら
こういう答えは出さなかったかも。

でも実際、捜索作業の代わりは
いるかもしれないけど家族旅行は
芦屋以外誰も代われない大事な用事。

安倍さんの優しい言葉に惚れた 笑
芦屋、短い間かもしれないけど
たっぷり家族旅行楽しんできてね。

大晦日の捜索を終え、家族と合流。
汗もかいたし一先ず温泉に行こうと
リュックを開けると中にはモジャ 笑

なんかソワソワしてると思ってたら
こっちについてきちゃったのね 笑

安倍さんいわく、最近はずっと捜索
続きでモジャはずっと留守番してて
誰も相手してあげられなかったから、
脱走してくのに気付いていたけど
あえて見逃してやったらしかった。

せっかくだし、モジャも短いけど
年越したっぷり楽しめたらいいね。

‥にしてもぷかぷか浮いてるの
可愛くて仕方がないんですが 笑

年越しを前に、何度目かの温泉に
行ったお姉ちゃん。部屋に残された
芦屋とお母さんは少し昔の話をした。

この3人で旅行に来たのは初めての
こと、でも芦屋が生まれる前にも
お母さんとお姉ちゃん、榮の3人で
旅行に行ったことがあったらしい。

その近くで雪崩が起こったんだけど、
その時榮は様子がおかしかったと言う。

1人きょろきょろと周囲を見渡しながら

「どこからか『助けて』
って声聞こえないか?」

お母さんが何度耳を澄ませても
聞こえない、オレの聞き違いだと
言いつつもその後1人でどこかへ
走っていってしまったんだという。

2時間後‥

「声が聞こえた方へ行って
みたけど誰もいなかった。」

と雪まみれで帰ってきたらしい。

その場所がどこなのか、確認する前に
お母さんは眠りについてしまったけど
芦屋は、その声の主はトウゲンさん
だったんじゃないかと考えていた。

芦屋にとっては父親ではあっても会った
こともない、昔の記憶のせいで少々怖い
印象さえあるかもしれない榮という人。

お母さんと出会ってから、芦屋が
生まれる前までの彼の思い出話は
やっぱりすごく優しく暖かい印象を
受けるものが多いように感じる。

相変わらずよくわからないことが多い
けど、きっと家族を大切に想える
いい父親ではあったんじゃないかな。

だからこそ女の子の声を聞いた時、
大事な娘と重ねてしまったんじゃ
ないかななんて少しだけ思った。

連日捜索を続けてはいるがいまだ
手がかりは得られずじまい‥そう
話す安倍さんに物怪庵は尋ねる。

「何一つ?些細なことも?」

その時、芦屋が言っていた波の音
のことを思い出したようだった。

実際のところこれが手がかりと
言えるものなのかはわからない。
翁様も、隠世に海があるという話は
誰からも聞いた覚えはないと言う。

捜索活動を再開してからも、やはり
芦屋には聞こえるが安倍さんには
さっぱり聞こえていないようだし。

でもわずかでも関係がある可能性が
あるのならと波の音に注意しながら
捜索を続けていると‥蝶を見つけた。

「何故か波音が空から聞こえるんです。
空に海が浮いてる訳ないですよね?」

そんな芦屋の言葉に空を見上げると
樹海には似つかわしくない黄色い蝶。
芦屋が聞こえる音を辿ってみると、
そこにはまたその蝶がいたのだ。

安倍さんが蝶を追いかけると、
閃光を放って消えてしまって、
それと一緒に波の音も消えた。

アオイさんのこととその蝶が
関係あるかはわからないけど
一つの可能性として調べてみる
価値は十分にありそうだね。

翌日から、捜索と平行して蝶を捕獲
出来れば‥と虫取り網を持ち出した。

もう出てきてくれない可能性もある
かもしれないと思っていた黄色い蝶
だけど、また2人の前に姿を現した。

でも他の蝶に比べ警戒心が強いのか
一向に捕まってくれる様子はない。

決して捕まらない距離から、それも
捜索初日からずっと彼らの行動を
観察しているかのような黄色い蝶に

「…ご存じなんですか?彼奴の居場所を
…どこにいる?アオイは生きてるのか…?」

必死な、真剣な表情で安倍さんは問う。
すると蝶は芦屋のすぐそばに近づくと

「現世へ帰れ。これ以上捜し
に来るな…アオイは死んだ。」

波音と共にそう声が聞こえた。
でもその声が‥蝶から聞こえた
その声が榮の声だったという。

いやもう、脳内キャパオーバー 笑

その後も捜索は続けたが、安倍さん
の声に血の気はないように感じた。
でもその日、物怪庵に帰り着くと

「…物怪庵、報告がある。アオイの
手掛かりようやく一つつかんだぞ!!」

なんだか気合が入りまくっていた 笑
確かにそうだ、あの蝶が榮本人なら
同じようにアオイさんが生きている
可能性だって決してゼロではない。

なんとしてでも、またあの蝶を見つけて
知ってることを全部教えてもらおう。

しっかりやれることやりきって‥
そうしないと安倍さんも隠世姫も
きっとこのまま前に進めないよ。

翌日、芦屋の作戦勝ちで黄色い蝶を
虫取り網で捉えることに成功した。

でも蝶は網をすり抜け逃げようとして、
捕まえようと蝶に手を伸ばした芦屋の
手には威光が出てその場に倒れ込んた。

芦屋が意識を取り戻すと、目の前には
芦屋の目の前にはまだ高校生の姿の榮。
そこは海で、芦屋は榮の手を掴んでた。

手を話すと芦屋は身体から煙?を
出して消えそうになってしまって
榮から手を離すことは出来なそう。

芦屋は物怪庵の奉公人であること、
そして榮の息子であることを伝えた。

「…そういうことか…どうりでオレ
とお前の”威光”が繋がる訳だ…。」

詳細はわからないけど、そういうこと
らしい‥蝶を捕まえようとした時に
威光が出たのも榮の威光に影響を
受けてのことだったのかも知れない。

状況を理解すると、榮は芦屋を
隠世から遠ざけようとする‥

「芦屋…花繪…現世へ帰れ、これ以上
捜しに来るな。アオイは妖怪…いくら
人の姿に化けようとも似て非なる者だ…

妖怪が見えるからといってむやみに
関わると自分だけでなく周りの人間にも
災いが降りかかる……オレの家族も妖怪に
殺された…妖怪のために…アオイのために
自分を晒すな。アオイのことは忘れろ。」

芦屋をだったのか、人間をだった
のかホントのところはわからない
けど、アオイのことを話してくれる
気はサラサラなさそうだ。

でもそんなふうに簡単に忘れることが
出来ていたならここまで捜しに来ない。
安倍さんの思いや榮に対する自分たち
家族の思いを、芦屋はまっすぐ伝えた。

「誰かに置いてきぼりにされた人達に…
オレは…『忘れろ』なんて言えないよ。」

芦屋はそう言うと、榮の両腕を掴み
アオイさんの居場所を問い詰める。
榮は答えてはくれなかったけど..元
の場所で芦屋が意識を取り戻した時
波音が、今度は芦屋だけではなく安倍
さんにも聞こえるようになっていた。

「波音の方へ行ってみましょう!今なら
行けなかった樹海の奥へ進めるかも…!」

ようやく一歩前進だ。でも少し気に
なることがあって‥ 芦屋が倒れてる
間ものすごい勢いで威光を放ってて、
それの影響か瞳が金色に変色してる。

だから最初、意識を取り戻した芦屋
に対して安倍さんは意識が榮のもの
である可能性も考えたくらいだった。

何も悪影響がないならいいけど、
いつまでも治らないとなれば
それは少々不安が残るところ‥

瞳のことは気になるが一先ず、
波音の聞こえる方へ向かうと
そこにはさっきまで芦屋と
榮がいた海が広がっていた。

そこで安倍さんはアオイさんの
気配を感じ取ることができた。

もしかしたら感じ取れた気配は
微弱なものだったかも知れない。

それでも気配がするってことは
なんらかの形で生きてるという
ことだと思っていいだろうか?

もしそうだとしたら、榮が言ってた
死んだっていうのはどういうことだ
という話になるわけだけど‥すごく
気になるところでまた続きは次巻 泣

~ひとこと~

…急展開です。めっっっっちゃ
気になるところで終わりました。
よくあることですが、早く次巻
読みたくて仕方がありません 笑

アオイさんの生存はまだはっきり
確認することは出来ていないけど、
これは本当に願望でしかないけど
どんな形でもそこそこ元気に生きて
いてくれたらいいなと願うのみです。

気配を辿って会えた時、その再会
が悲しいものになりませんように。