不機嫌なモノノケ庵 第13巻

著:ワザワキリ 先生

樹海には、祟りの原因である厄病草がある。
厄病草の甘い香りに寄ってくる多種多様の
虫達が蜜や樹液を吸い種虫となると、妖力を
吸うため妖力を持つ妖怪の体内に入り込む。

最終的には体中に根が張って動けなくなり
妖力を吸われる‥これが寄生樹に祟られる
ということらしい。三権神が心配したように
祟りは隠世のすぐそばまで広がっていた。

亀薬堂から預かった除祟薬で祓いながら
樹海の奥の方まで2人は見回りをしていく。

そんな中で‥物怪庵が呼べない、という話
になって芦屋はただ疑問を口にしただけ。

でもそれに対して安倍さんはちょっと
気まずそうな表情を見せ話をそらした。

この話はこのまま終わってしまう。

樹海を進んでいくと、寄生樹に祟られた
妖怪の末路‥亡骸がある所に辿り着く。
除祟薬を使い祓おうとするが、それ
を邪魔しようとしてくる妖怪がいた。

にゅおーん‥と不思議な声で鳴く、
おそらくニオという名前の妖怪だ。

亡骸となってしまったそれはニオの
友達だったようで、友達を守ろうと
必死に邪魔をしてきたようだった。

でもこの亡骸はすっかり種虫の巣に
なってしまっていて、そばにいた
ニオは種虫に憑かれてしまった。

安倍さんの応急処置によってニオは
後に元気になるんだけど、最終的に
その亡骸は除祟薬で燃えてしまった。

「…キミの守りたいものに…
酷いことをしてごめんね…。」

安倍さんに対して涙を流しながら威嚇を
してくるニオ。ニオを抱きしめながら
一緒に苦しそうな表情を見せる芦屋。

でも‥仕方がなかったんだと思う。
他には方法がなかったんだからね。

「全ては……妖怪のためにあれ…。」

(妖怪(アオイ)のために…)

燃える亡骸をあとにその場を立ち去る際、
安倍さんはそんなことを口にしていた。

妖怪 = アオイのため‥安倍さんと
アオイに関してはまだまだ明かされて
いないことが山ほどある気がする。

芦屋は知らないことだらけだろうし、
話をそらされたことだってきっと
なにか関係あるんじゃないかな。

ギギギの親分の話の時、アオイも
親分みたいに祟られて、あの薬を
使って死なせてしまったのだろうか
なんて思っていたけど‥可能性は
ゼロではないのかもしれないよね。

今安倍さんは、芦屋と出会ったことで
人間も妖怪も守りたいと思うように
気持ちが変化してってる気がする。
人としては良い変化かもしれない、
でもこれが物怪庵主としてはどうか
‥今後にいろいろ不安が多いよ。

樹海にいる妖怪は隠世から逃げて身を
潜めている脱獄囚が多いと言われてた
けど、ニオは脱獄囚ではなかった。

捜索願が出ていたようで、芦屋は司法
さんとモジャと一緒に送り届けることに。
安倍さんは先に立法さんに報告に向かう。

無事送り届け立法さんのもとへ向かい
ながら、樹海の現状を芦屋から伝えた。

「…アオイがおったら状況は違ったんよ。」

姫君の体調が優れない今、何か打開策は
ないかという話で出てきたのがアオイ。
アオイは随分と強い妖力の持ち主だった
ようで、今の姫君が退くことなったら
次はアオイがその座につくはずだった。

司法さんはそう教えてくれた。
物怪庵の主というだけでなく姫君
の座を継げる貴重な逸材だった。

アオイのことは、まだまだ謎だらけ。
でもそんな話をしていたら、司法さん
は道に迷ったなんて言い出して大変 笑

「ここ何処ォ!?迷子なのォ!?」

「物怪庵来てぇぇぇぇー!!」

「あべのさああああん、あべの
さああん、もののけあああん。」

慌てて大声で助けを呼び出す芦屋の声に‥
ぞろぞろと妖怪達が集まってきたようだ。

ギギギのチビ達、ジョウマツさんと
アンモ姫、マンジロウ、ボンタさん、
コモンさんのとこで育ったチビ達。

それはそれはぞろぞろと大行列になった。
彼らのおかげで無事目的地に辿り着けた
一行だったけど、司法さんはその様子
を見てこんな疑問を口にしてくる。

「…んなぁ芦屋くん、もしかして
さっき”威光”を使ったんか?」

もちろんそんな自覚はないわけで、
大慌てになる芦屋だったけど‥
きっとそんなことはなかったろう。

ただ芦屋のピンチかと妖怪達は
心配して来てくれただけだった。
司法さんも見張り役として一応
確認しただけだと言っていた。

(自然と周りに妖怪が集ってくる…そう
いうとこ…少しアオイに似とるなぁ……)

アオイにもそういう部分があったようだ。
黒猫の姿をしてるのと、榮に化けている
姿しかまだ出てきてないんだけどアオイ‥
一体どういう妖怪だったんだろうね。

少しずつアオイの話が明かされてってる
のに、相変わらず謎は深まるばかりだ。

「ちなみに芦屋くんは樹海で気に
なったことなどはあるかい?」

些細なことでも無関係と思うことでも
構わないからと立法さんに言われて、
芦屋は安倍さんに話をそらされた
時のことを思い出したようだった。

「……あの…安倍さんって…以前にも樹海
へ入った経験があるんです……ね?」

特に答えてもらいたくて出た発言
というわけではなかったけど…

「奉公人時代にイツキは
樹海へ入ったことがあるん。」

司法さんがそう教えてくれた。
立法さんは安倍さんの初対面
の時の話も教えてくれた。

幼い安倍さんが妖怪に襲われている
所をアオイが助けたことがきっかけ。

「気に入ったから奉公人に雇うことに
したんだ。どうぞ今後ともイツキを
ごひいきに。イジメたりしたら殺すぞ♥」

立法さんと安倍さんの初対面時、立法
さんはアオイから殺害通告を受けた 笑

それ以外にもちょっとした小話やら、
もはや立法さんや司法さんとの思い出
トークで少しの間盛り上がってたけど、
どれも芦屋は知らない話ばかりだった。

アオイが主だった頃の話は、芦屋は
何も聞かされてこなかった‥きっと
それに関する話はこれまでそらされて
来たのかもしれない‥理由は謎だけど。

聞かされてないことを司法さんに伝えると、

「…んならオレらから教えんでおくんよ。
イツキが樹海へ入った理由は言わんとく。」

まだまだ知らないことは多いままだ。
それでも芦屋はそれ以上無理に
詮索しようとはしなかった。

わからないことが多いってことは、
それだけ不安に思うことだって多い。
それでも安倍さんを信じているから、
自分が知るべき時が来たら安倍さん
が話してくれるだろうと待つんだ。

これは芦屋の強さだろうね、すごい。
芦屋のこういう所、ホント尊敬する。

樹海の見回り後1週間近くの間は
姫君の看病が続くということで、
その間安倍さんは隠世に滞在した。

その事情を芦屋が禅子に話すと‥

「もし隠り世のお姫様の具合が悪いままなら
安倍はどうするつもりなんだろ…。花繪達と
一緒にいるとわからないけど安倍のことを
知ると別世界の人だなって実感する。」

そんな禅子の言葉に、安倍さんは人間
だけど隠世の人で、姫君の体調が悪い
ままなら帰ってこないんだろう‥と
少し不安になっていた芦屋だった。

モジャもお留守番で、安倍さんがいない
間は随分寂しい思いをしたみたい。結局
予定より少し早く帰ってこれた安倍さん‥
しばらくモジャの高速すりすりが続いた 笑

帰ってきて早々、禅子は安倍さんに見て
ほしいと心霊写真を持ってきたんだけど‥

「これさぁ…燃やしちゃうの?
…燃やす前に晴齋に見せるといいよ。
見せたらきっと-…ビックリするよ。」

禅子は、ヤヒコのそんな言葉を聞いて
安倍さんに写真を持ってきたようだ。
実際、安倍さんはおもしろいくらい
びっくりした表情を見せていた。

一見何の違和感もない普通の家族写真。
そこにはアオイが写っていたという。
安倍さんの表情の理由はそれだった。

ヤヒコの口ぶりからしてこれはアオイで
間違いなく、アオイがこの場所に赴いた
とすればそれは妖怪絡みだったはず‥

安倍さんのその言葉で、この写真の
場所へ実際に行ってみることになった。

その場所にもう建物は残ってなかった。
でも突然、写真が消え始めその場所
には写真に写った建物が現れた。
まるでブラックホールのようにその
建物の中に吸い込まれてしまった。

明らかにおかしな状況で妖怪の気配も
しているのに、だれも見当たらない。
その理由はすぐに明らかになった。

導かれるままに建物の中を進んで、
ノートパソコンに文字が打たれた。

「あなたとこのように会話をして
確信しました。何せ…身近にあなた
とよく似た者がおりまして…。」

物怪庵の茶室と同じで、この
建物自体が妖怪だったようだ。

気づいた時最初に見たのは潰された
自分の体だった。建物が取り壊された
時に始めて目を覚ましたということ。

だからそれ以前ここに住んでいた人
のことは見たことも会ったこともない。

でも瓦礫の中にアルバムを見つけて、
家族の写真がたくさん詰まっている
それを懐かしいと感じたんだって。
会ったことがないはずなのに不思議と。

そしてそれを持ち主に届けたいと
思うようになって‥でも自分には
実体がなく届けられないと気付く。

だから、妖怪を連れている2人を
見てアルバムを託そうと思って
招き入れることにしたんだろう。

写真は別室の宙に浮いていた。
瓦礫の中から拾おうとした時に
ばらばらになってしまったとかで
安倍さん達はそれを2人で集める。

たくさんの写真を集める最中、
その妖怪はその写真を撮った時
のことをたくさん話してくれた。

でも会ったこともないのにどうして
覚えてるんだろうと疑問を口にする。
その理由を安倍さんが教えてくれた。

記憶こそが由縁‥もしかしたら物怪庵
も過去にあの茶室で過ごした誰かの
記憶が由縁で妖怪になったんだろうか。

わからないけど、安倍さんがやたら
詳しそうなのを見ると‥そういう
可能性もあるかもしれないと思った。

この妖怪は今まで自分が何者なのか
どうして会ったこともない人達の
ことを覚えているのか‥ずっと何も
わからないままでいたことを知って、
芦屋はそれを自分に重ねたようだ。

得体の知れない力”威光”を自分では
コントロール出来ないままの芦屋。
それを無意識に使ってしまう恐怖。

自分が不気味‥そんなふうに感じて
しまってるんだろう。それって辛い。

妖怪達や威光のこと、そして自分の
こと、榮のこと‥そういうのをもっと
知ることができたら少しは芦屋のそう
いう思いは楽になってくれるのかな?

自分のことを不気味なんて思って
しまうなんて、悲しすぎるもの。
この妖怪は自分が何者なのか知る
事ができて本当に良かったよね。

芦屋もきちんと知ることが出来る
日が早く来たらいいなと願った。

そうして写真を集めていたら、その
中に安倍さんが目を止めるものが‥

榮とアオイが写っていた写真だ。
何かしらの依頼でこの場所に来て
ここに住んでいた家族と関わって
いたという証拠だろう。でも一体
どういう依頼があったんだろう。

この家の持ち主の家族に会えば
もしかしたら何か知ってるのかな。

~ひとこと~

13巻、また随分と気になる所で終わって
しまいました。次巻が出るのはまた少し
先になりますが‥早く読みたいです 笑

またやたらと文字だらけになってしまい
すみません、書きたい所が多すぎまして 笑

また14巻が出たらレビューさせて
頂きますよかったらお付き合い下さい。