著:ワザワキリ 先生

意識を取り戻した芦屋は安倍さんを
見ると勢いよく頭を下げて見せた。
「あ…謝って…済むことじゃないのは
分かってます…オレが止められれば…。」
安倍さんは、妖怪を殺してしまったこと
についてだと思った。でも芦屋の謝罪は
それ以前の話、ササという妖怪に操られ
安倍さんの首を絞め殺そうとしたこと。
ササを殺してしまったこと、それ
以前に榮の人格になっていた間の
ことは一切覚えていないようだ。
だから、安倍さんは隠すことにした。
覚えていないなら不幸中の幸いだと。
「立法・司法・行政‥あの”三権神”が
この真実を知ればハナエの身が危険だわ。」
安倍さんが一連の出来事を物怪庵に
伝えると、物怪庵はそう答えた。
「…俺さえ口を噤めば”平和”だな…。」
それは本当に大丈夫なんだろうか。
危なくはないんだろうか‥芦屋も
知らないままで大丈夫なんだろうか。
そんな不安でいっぱいのところから、
モノノケ庵12巻始まります … ☆

安倍さん自身、芦屋に真実を隠すことに
対する後ろめたさもあったんだと思う。
ほんの少しの不自然さに疑問を持った
芦屋は、安倍さんにこんな質問をした。
「榮のことに関してオレに
隠し事はありませんか?」
全て打ち明けた方がいい‥そう思いつつも
打ち明けられぬまま、ある仕事で芦屋家に
来ていた安倍さんは、芦屋母のゴリ押しを
断ることが出来ず芦屋家に泊まることに 笑
夜は一時的に物怪庵に戻っていたけど、
真夜中にモジャに呼ばれ戻ってくると
無意識に威光を使ってる芦屋がいた。
ここ最近、芦屋はずっとある悪夢に
うなされていた。その内容はいつも
威光で妖怪を殺してしまうというもの。
これまでは見たことのない妖怪相手の
夢だったようだが、今日の妖怪はササ。
芦屋が見た夢は、あの日の記憶だった。
そしてきっと、これまでの夢の内容も
榮の記憶の一部だったのかもしれない。
芦屋がそんな状態になってしまってる
ことを知って、安倍さんもさすがに
覚悟を決めて話すしかなかったろう。

安倍さんから話を聞いて、芦屋は
ぼんやりとした記憶の中で見えた
学ラン姿の少年のことを思い出す。
若かったけれど面影はあった、
あれは間違えなく榮だった。
自分の中に榮が潜在していて、
あの日表側にそれが出ていた。
そして、ササを威光で殺した。
自分の中に欠けていた記憶を補う
ように思い出した記憶と聞いた話を
繋げ、してしまったことの重さを
冷静に受け止めたように見えた。
今後のこと、不安なことだらけだろう。
それでも、自分のしてしまったことを
まっすぐに受け止め、今後の恐怖への
覚悟を決めていた芦屋だったけど‥
「ササ殿の件、アイツらは知らねぇよ。
…まあ、…そもそも立法に報告して
いないから知る由もねぇだろうが…。」
「もし行政の耳に入れば次は何を仕掛けて
来るか予想がつかねぇ、注意しておけ。」
そんな安倍さんの言葉に、芦屋の頭に
浮かんだのは行政が言っていた言葉。
「僕に…盾突いたな…イツキ…
また人間を庇うのか?物怪庵の
主にあるまじきこと---。」
自分のことより安倍さんを心配した。
「自分のこと考えてます?」
状況は正直、全くいいものではない。
それでも、互いに互いのみを案じて
覚悟を決められる彼らは本当に強い。
この2人が出会えて、物怪庵の主と
奉公人がこの2人でよかったと思った。
これから先のことはいろいろ怖い
けど負けずに立ち向かってほしい。

芦屋家から安倍さんが帰る時、母親は
いつまでも安倍さんをじーーーっと
見つめ、ひたすら手を振り続けてた。
その理由を、榮に似ているからと言う。
彼女は、まだ榮が死んだことを知らずに
ずっと帰りを待ち続けているんだろう。
本当のことを話した所できっと簡単に
信じられることではないと思うし、
何よりまだ分からないことが多い。
でもいつかは‥ちゃんと伝えられる
日が来たらいい。現実を知る日がね。
何もわからないで、ただただ待ち続ける
ってどれだけ心細いものなんだろう。
一体どれだけ、辛く苦しいんだろう。
それなのに彼女は一切そういう素振りを
見せずにこれまで生きてきたんだろうか。
‥ホントどこまでも素敵なお母様だよね。

ある日立法さんから呼び出しがかかる。
バレてしまったのかと身構える2人だが、
例の件を打ち明けると予想外の収穫だよ
と言われてしまう‥バレてなかった 笑
「隠しておくよりは潔く話した方が
好印象を与えると私は思うよ。」
やはり行政さん達には話すべきと言われる。
その上、その絶好の機会があるとまで‥
立法・行政・司法‥この3人は”三権神”
と呼ばれ、近々ある3人の集いに芦屋と
安倍さんも出席することになってしまう。
ここでルール使う立法さん怖いわ 笑
‥いろいろ覚悟決めるしか無いわな。

三権神が集まった場で、芦屋から例の件の
報告が行われる。嘘偽りなく真実のみを。
覚悟を決めすぎていろいろと余計なことを
言いすぎてしまったようで‥最終的に安倍
さんからギョマケセラ(現世で言う豆大福)
を刺した串を喉元をぶっ刺されてしまう 笑
殺気がだだ漏れていた行政さんだけど、
このギョマケセラは彼の好物だそうで
「行政もコレ食うん、少し落ち着くんよ。」
司法さんに大量のギョマケセラを
渡され少し落ち着きを取り戻す。
ここでようやく、この集いの本来の
目的が明らかになりかけるんだけど‥
「芦屋花繪、貴方は”姫君”をご存知で?」
もちろん知らない。芦屋が知っている
姫なんてアンモ姫くらいだったもの 笑
議題を話しても理解できないようでは
意味がないと、まずは安倍さんを師に
この世界のことを勉強することに 笑
姫君とはヒエラルキーで隠世の最高位に
座しているお方。正式名はカクリヨノ
カミカモワケイカヅチヒメというが、
一般的には”隠世姫”と呼ばれている。
最高位の理由はこの隠世の先住者と
言われているから。さらに他の妖怪
とは桁違いの妖力を持ち、その力で
外界から隠世を守ってるからだという。
外界にはギギギの親分が患った病”寄生樹”
のように妖怪を蝕むもの(隠世では祟りと
呼ばれる)が蔓延した樹海が広がっていて
それが隠世に近づかないよう守っている。
「この隠世は姫君の”加護”の下に
安寧な社会が成り立っている。」
それくらい、とても大切で大きな存在。

隠世姫の名前が出てきた。それも
妖怪を殺したと言っている人間が
いるこの場でその名を出した理由。
安倍には大体予想が出来たようだ。
数日前亀薬堂の近くで発見された蝶。
これは本来隠世の外”樹海”に生息
しているもの‥姫君の妖力で本来
なら隠世に入ってくるはずはない。
それが隠世に入ってきていたと
いうこと、つまり姫君の加護の
範囲が狭まってしまっていると
いう、極めて危険な状態だった。
今の所隠世内に大きな被害はないが、
外側に妖怪は近づけないため調査を
することも出来ないが、人間ならば
樹海へ入っても祟られる心配はない。
それゆえ物怪庵への指令とされた。
でも奉公人である芦屋に対しては
依頼で拒否権はあると言う立法さん。
それに対して、芦屋は行くと答えた。
(この依頼は隠世姫…ひいては隠世で
暮らす妖怪達を助ける仕事。一つの
妖怪の命を奪った身…オレの働きが
妖怪を救うことに繋がるなら…。)
「危険な任務に安倍さん一人を向かわ
せる訳にはいきません!オレも安倍さん
と同じく”指令”としてお受けします!」
この後、行政さんに殺されかけましたが、
最終的に2人への指令ということで危険
ではあるがとても重要な役を任された。
何事もなく無事帰ってこれるといいけど
‥2人の無事の帰還を祈るのみですね。
~ひとこと~
いろいろ、次から次へと大変です。
榮の件に関してはきっとまだ何も解決
できていない状態で不安も多いですね。
今わかっていることだけだと榮は妖怪
殺しの悪人というイメージがついて
しまいそうだけれど、見方を変えれば
ササの件では芦屋達を助けてくれた。
それ以外についてはわからないけど‥
安倍さんが信頼してそばにいたアオイ
と共にいた人間がそんな悪人とは考え
にくい、さらに芦屋のお母様が惚れて
結婚した相手‥そんなに悪人なはず‥
いろいろスッキリしませんが、ただの
悪人なんて認めたくないのが本音です。
妖怪を殺している時点で善人ではないの
かもしれない。それでも彼の中に何か
しっかりした芯があればいいのにと、
勝手ながら願いたくなっています。
少しずつ明かされていくんでしょうね。
続けて13巻レビューさせて頂きます。
よかったらお付き合い下さい ☆