不機嫌なモノノケ庵 第11巻

著:ワザワキリ 先生

「ボクがアオイのところへ遊びに
いったらそこにこいつがいたんだ。
『キミ誰?』って聞いたら、『物怪
庵の奉公人だ』って言ってたよ♪」

ヤヒコは、その人間に化けてみせる。
その奉公人は芦屋榮‥芦屋の父親だ。

安倍さんが散々遊び相手をして化けて
くれたようだけど、それ以上の情報は
得られそうになかった。奉公人がいた
という情報は、立法さんや物怪庵にも
伝えられていないことのようだった。

そしてアオイさんが記した業務報告書
にもその記載はないものの‥ある頃から
報告内容の隣に描かれた妖怪画図の中
に猫が描かれることがぽつぽつと‥。

「出現回数209回…
見逃しはねぇはずだ。」

安倍さんってほんとマメだよね ((TдT))w

報告書に猫が描かれた最後の依頼、
それは16年前の11月1日と11月2日。

11月2日は、最初に榮が失踪した日。
そして物怪庵の話によると、その日
少し変わったことがあったという。

いつも通り妖怪祓いの依頼で出かけて
いったアオイはその日いつまで経っても
帰ってこなかった‥心配していると、
随分経ってから怪我をして帰ってくる。

どうしたのか尋ねても肝心なことは話して
くれず、それでも執拗に聞いていたら

「猫を一匹、看取ってきた。」

そう言って泣いていたんだと話す。
‥何があったのかはわからないけど、
その日榮は亡くなったんだろう。

そうすると、3年後に芦屋の前に現れた
彼は何者だったのかという話になる。

「それは恐らく、芦屋榮に化けたアオイだ。」

「彼奴には他の妖怪にない異才があった。
現世にいる全てのものに対し己の姿を可視化
できる唯一無二の御業、妖怪の見えない
人間でもアオイのことを認識できる。」

アオイさんとはそういう存在だったらしい。
ずっと父親だと信じていたそれは、父親に
化けた全く別の生き物だったというのだ。

芦屋としては‥ショックが大きいだろう。
でもどうしてそこまでして芦屋の前に
姿を現したのか‥その理由は謎のまま。

極めて真実に近いことだと思うが、
これまで話したことは安倍さんの
推測に過ぎない、真実を知るのは
本当にアオイさんだけなんだろう。

そしてもう一つ、気になることが‥
猫が描かれた最後の依頼日にある、
もう一つの依頼‥かな?報告内容は
いたって普通のものなんだけど、
その妖怪画図は随分気の抜けた絵‥

これは何かを意味しているのか。
これまでの絵とは明らかに違う。

でもその意図が全く掴めない。

コモンという妖怪からの依頼。
これはアオイがいた頃にされた
依頼で鳥のような妖怪の雛を
祓って欲しいというものだった。

依頼された頃はまだ幼すぎて、
隠世の環境に馴染めないからと
今になって改めて依頼された。

5匹中4匹は無事飛べるように
なったものの、1匹・チュンゴ
だけがまだ飛ぶことが出来ない
から、チュンゴだけはコモンの
元に残るか‥という話も出て
いたのだけれど‥実は飛べない
フリをしていただけだと判明。

その後、5匹兄弟は喧嘩を始めて
しまったものの、彼らの言葉は
何を言ってるかわからず喧嘩の
理由はわからないままでいた。

隠世に祓うため、一旦物怪庵に
戻ってきた時にその内容が判明。

物怪庵には彼らの言葉がわかったらしい。

「飛ぶ練習を始めた頃に兄弟みんなで
決めたそうです。兄弟のうち一人だけ
コモンさんの元に残していこう…って。」

その約束のための飛べないふりだった。
でも強風により吊橋からコモンが落ち
そうになった頃に焦ったチュンゴは、
つい飛んで助けに行ってしまった。

きっと、ずっと約束していた作戦を
ダメにしたことで喧嘩したんだろう。

なんとも温かい‥優しい嘘だ。

彼らの考えた作戦は失敗に終わったし、
一人の方が気ままなんて言ってたから
祓ってもらおうと覚悟したチュンゴ
だったけど、チュンゴ自身がどう
したいと思ってるかはまた別の話。

「コモン殿に言われたから隠世へ…
ご兄弟と決めたから現世に…それで?
ご自身の考えはどちらでしょう?」

安倍さんがそう尋ねると‥兄弟たちと
少し話をした後、チュンゴは1匹で
コモンの元へと飛び立っていった。

安倍さんは言っていた。コモンの言葉
が『一人が気ままなフリ』だったらと。

実際‥その晩一人で眠りについた
コモンは随分寂しそうにしていた。
でも翌朝目を覚ますと目の前には
チュンゴが一緒に眠っていて 笑

びっくりして、混乱して、怒って‥
でも最後は少し嬉しそうにお帰りと、
チュンゴを迎え入れたコモンだった。

育ての親とチビ達の心温まる話 ♡

今回は、ボンタという豚っぽい妖怪を
祓うだけの仕事なはずだったんだ‥
でもボンタとは別の、ササという
蜘蛛の妖怪がボンタに取り憑いた。

その気配で芦屋を、安倍さんを普通の
人には入れない空間へ迷い込ませると、
今度は2人に取り憑こうとするササ。

目的は、封印をとき自分を開放させる
ため、安倍さんに取り憑くのは失敗に
終わったが、芦屋は完璧に取り憑かれ
思考や行動を支配されてしまい‥

「私の言う通りに動かない
奴は邪魔…いらない。」

「…そいつ殺してよ…。」

ササに操られるままに安倍
さんを殺そうと首を絞める。

ハッとして、首を絞めた手を離すが、
動かなくなってしまった安倍さんに焦り
困惑する芦屋に‥誰かの声が聞こえた。

「このままじゃお前も殺されるぞ。」

目の前にいたのは、金髪金眼の
見慣れない男‥彼は芦屋に乗り
うつったのだろうか‥威光を
使いササを消し去ってしまった。

少しの間気絶していた安倍さんも
無事意識を取り戻し‥芦屋の容姿
をしたその男性に2つ、告げた。

金髪金眼のその男は‥芦屋榮、
芦屋の父親だったようだ。

既に亡くなっていると思われる人、
何が起きているのかわからない。
でも今確実に、芦屋を救ったんだ。

「…榮殿、芦屋を助けに出てきて
下さり…有難う御座いました。」

大事な息子を救うために出て
きてくれたということなのかな。

きっと‥今回はこれでよかった
んだと思う、これ以上の最善が
あったのかはわからないけれど。

でも安倍さんは後悔していた。
妖怪を殺してしまったこと、芦屋
に妖怪を殺させてしまったこと。

仕方がなかったんだとしても、
やっぱり辛くは思ってしまうよね。

元々物怪庵は、妖怪のために
働いていることだったはずだ。

芦屋も心配だけども‥何より
安倍さんの心や立場が心配だ。
隠世の者達に咎められたりする
ことももしかしたらあるのかな‥

~ひとこと~

11巻でした。

謎は多いまま‥というかまた謎が
増えた部分もありますが、今回は
芦屋榮について随分掘り下げられた
気がしてます。とはいえほんの一部
でしかないのだけれど。そして芦屋
の血‥恐らくいろんな物語の中で
描かれることの多い陰陽師の血筋、
安倍晴明と芦屋道満(蘆屋道満)に
関連したお話なんだと思います。

芦屋の血は、妖怪が見えたり威光を
使えたりする者がいたんでしょうね。

榮もその一人‥そして芦屋花繪も
十分にその才能を持ち合わせてる。

隠世の者にとって芦屋が危険とされる
のは、やはり榮が影響しているんじゃ
ないかと思います。今後‥怖いね。
妖怪を殺してしまったわけだから。

次巻、まだ先になりますがほんと
待ち遠しいです。また12巻が入手
出来次第、レビューさせて頂きます。