著:ワザワキリ 先生

合宿の成果として、以前に比べれば
かなり気配の察知能力が付いた芦屋。
晴齋にも無事合格をもらって物怪庵に
帰ってくると、そこには立法さんが。
「アタリ」を引けば、隠世への出入りを
条件付きで許可するということだった。
2つの箱、アタリの中には妖怪がいて、
芦屋は見事にそれを当ててみせた。
条件:司法が芦屋花繪に同行する
場合のみ出入りを許可する。
行政さんのことで芦屋はとても
怖い思いをした、それによって
きっと晴齋にも迷惑をかけた。
また芦屋を連れて行くとなると、
晴齋にも迷惑をかけることになる。
そうなるくらいならとハズレを
引きたがった芦屋だったけれど、
晴齋は芦屋に「当てろ」と言った。
自分のことも、晴齋のことも思って
ハズレをと思ったけれど、晴齋が
アタリを望むのならと、当てた。
それでも…
「俺はもう隠世へ入れる気はない。」
アタリを引かせて条件付きで許可を
もらえることになったけど、芦屋を
隠世へ行かせる気はないと晴齋は言う。
「…だって『何か』して当然の権利さ。
私の配下にある物怪庵の奉公人に手を出さ
れて私が大人しくしている訳がないだろ?」
立法さんはそんなふうに言っていた。
今回のことは、晴齋が立法さんの意志
をくんで当てさせたのかもしれない。

ケシという妖怪の願い。
「1日だけ人間の姿になって、盆踊り
の輪に入って一緒に踊りたいケ。」
その願いを叶えてほしくて、ずっと
願いを叶えてくれると噂の物怪庵を
探していたケシ。でも物怪庵を探し
西へ東へ歩きまわっているうちに、
身体はボロボロに壊れてしまった。
そこで、人間のカツラと服をつけて
幽霊騒ぎを起こしていたらしい。
物怪庵に見つけてほしいがために。
それを聞いて、人間にすることは
出来ないけれど、修理して、変装
させて、面をつけさせて盆踊りに
参加させることにした芦屋達だった。
(…だれも驚いてない。今度は上手く
輪に交じれたケ。ずっと憧れだった
この輪の中で、一緒に踊ってるケ。
ケシの願い…やっと今日叶ったケ!)
ボロボロになっていた身体も、隠世
に戻ればきっと元に戻るんだろう。
長い髪のカツラを綺麗にまとめてもらって
禅子が昔来ていた浴衣を着せてもらって、
ずっと憧れていた盆踊りに参加できて。
最後にこんなに嬉しそうな笑顔を見せて
もらえたなら、頑張って治したり準備
した彼らもやったかいがあっただろう。

ケシを隠世に祓った後、晴齋は糸が
切れたようにその場で寝てしまった。
倒れるほど眠くなるのは、隠世の扉を
二度開いたときだけのはずだったのに。
後になって話を聞くと、本当はお昼の
うちにもう1件仕事があったらしい。
行政からの依頼…倒れてしまったから
芦屋にバレるハメになったけれど、
本当は隠し通すつもりだったのかも。
こんなふうに芦屋に気を使うことで
晴齋が無茶をすることになると知って
しまった芦屋…つらいとこだよね。
でも…どうしたらいいんだろうね。

「もしこの依頼が行政さんからの
ものだったらきっと安倍さんは
ここに一人で来ていた……。」
そうやって、自分がもし怪我をしても
それを後悔することはないんだろうな。
芦屋の、こういう真っ直ぐ過ぎる所は
時に少し心配でもあるけど、やっぱり
すごくいい所だなとも感じている。
最初の縁は偶然から生まれたものだった
かもしれないけど、きっと晴齋は気持ちの
面でも無茶をすることは結構多かった。
身を挺して出ていたかもしれない彼の
行動を止めて代わりに動いたのは芦屋。
結果、誰もけがをすることはなかった。
いつか一人で無茶をして晴齋が1人で
どこかへいなくなってしまったら…
なんて恐怖も、あったりするのかな?
そんな晴齋を支えながら一緒に仕事を
する、いい奉公人になれたらいいな。

いきなり、物怪庵の奉公人なんです
なんて言い出した芦屋はこう続ける。
「若輩者ながらどんな依頼も手伝いに
伺いますので遠慮なくお頼み下さいね!」
冗談交じりに、晴齋がまた1人で
気負ってしまわないようになんて
配慮も込めているように思えた。
ぶっきらぼうだけど、真面目な上に
優しすぎる晴齋に対して、少々抜けた
所は多いけど、これでもいろいろと
考えていて人間も妖怪も同じように
大切に思える芦屋の存在はきっと、
これからいいパートナーとして
物怪庵を支えていくんだろうな。

行政からの依頼の際、晴齋は
こんなことを言われていたようだ。
(……行政--目論見が外れたな…。)
行政は、芦屋は怯えてもう来ないと
ふんでいたのかもしれないものね。
それでこそのこの発言だったろう。
晴齋としては、随分と嬉しいこと
だったんじゃないかなと思った。
ほんと、いい奉公人を雇ったよ☆

今度からは、嫌々なとこもあるよう
だけどちゃんと芦屋に話してくれる。
よかったね芦屋、これで支えられる。
で…このマーク、なんだったろう。
今まで出てきたことあったかな?
前に、立法さんからの依頼か何かで
家紋か何か?みたいなマークが出て
きたような気がする。またこれも、
誰かを表すマークだったりするのか?
少しばかり気になった点でした。
~ひとこと~
モノノケ庵9巻でした!!
今回も、色んな人の心遣いが
伝わってくるお話でした。
物怪案を大切に思う立法さん。
元々は妖怪を中心とした考えだった
晴齋が人間である芦屋を大切に思うが
故に1人で無茶をしてしまったりもした。
そんな晴齋を心配して動き出した芦屋。
決してわだかまりがあったわけではない。
それでも、今回は行政との一件からあった
芦屋や晴齋の迷い…というか躊躇いのような
ものがスッキリした形になった気がした。
それも、お互いを大切に思うことで。
それによって、もしかしたらお互いに
また怖い思いをすることも出てくるのかも
しれないけれど、きっと助け合っていけば
なんとかなる…そんなふうに思えてきた。
お話の最後に、芦屋がふと『威光』の
ことを思い出しているシーンがあった。
今後…あの諸刃の剣を使う機会がない
にこしたことはないんだろうけど…
出てくるのかね、使うこと。
まだ、ちゃんと使いこなせる
かもわからないところだけど…
10巻はまだ少し先になりますが、
また続きを紹介できたらと思います。