著:青桐ナツ 先生

話せば話すほど悪化する
状況に、そして海藤くんに
言われた言葉に…平介なりに
いろいろ考えてやってみるも
逆効果、更に機嫌を損ねる。
そんなことを繰り返している
うちに、1つの答が出てくる。
「むしろ喧嘩してくんない
から泣いたってとこか。」
…なるほど…それが、ボコスカとでも
口喧嘩だとしても、そういう反撃が
全く無いのは楽しかに寂しく感じる
かも知れないなって、すごく思った。
本人にそうなのー?なんて聞いたら
更に怒らせそうだなと思うけど、
納得できなくて言っていることに
特に反応がないような状況は、
確かに泣きたくもなるかもしれん。

伝えたくて言葉にしても、
平介の心には届かない。
それをもどかしく思って、
平介を責めることしか出来ない
海藤だったけれど…きっと海藤が
言うほど悪いもんでもないんだ。
テキトーだし自己中だし冷めてる
し…それでもきっと秋と会う前より
余程心のある人になったしね。
そして、佐藤や鈴木の言葉は、
反応としては薄いかもしれない
けれどそれでも平介に届いてる。
鈴木も佐藤も、それをちゃんと
わかってるから一緒にいるんだ。
実際、海藤の言葉にだって
一生懸命考えて平介なりに
答を出そうと頑張ってる。
まあ…なんか上手く伝わらなくて
逆に怒らせちゃってるけども。
人に心を伝えるのって難しいね。

約束は守らなきゃいけない。
嘘はついちゃいけない。
そんな言葉に板挟みにされて、
結局平介との約束を守るために
平介母に嘘をついてしまった秋。
…心が痛んだんだろうね。
最終的には嘘をついていた
ことを謝罪した秋だった。
ほんと…人間というものは、
これくらいクリアな心の
持ち主ばかりなら世の中
すごく平和なんだろうな。
でも、そうではない人が1人でも
いたら、みんな簡単に騙される。
純粋で心が優しくて真っ直ぐ…
これはすごくすごくいいことだけど、
これから秋は少しずつ人や世の中の
綺麗じゃない部分も知ってって、
それとどう付き合ったらいいかを
学んでいくんだろうな…少し寂しい
気もするが、それでもこんないい子
がつらい思いをしないように、少し
ずつ成長してってくれたらいいな。
そして、いろいろ知ってこの先
変化していくんだろうけれど、
悪いことをしたらごめんなさい
って反省して口に出せる秋の
まっすぐさは、この先もずっと
大事にしていけたらいいね。

愛されたら愛さなきゃ
いけない…海藤はその後も
何だかんだと平介に口を
挟んでくることが続く。
そんな海藤の言葉に、一見
何も考えてないように見える
が平介なりに一生懸命答えを
出そうとしてみる…そんなことの
繰り返し。そんな光景を見てたら
なんかいろいろ複雑な気持ちに
なってきてしまったよ。
愛が足りない。
愛とは情熱だ。
そうするべきだ。
海藤の言うことは、人が人と
関わる中で必要なスキル
なのかもしれないとは思う。
だからと言って、こうされたら
こうすべき、愛を返すべきだなんて
人に言われて出来るものではない。
自分で、返したいって思うから
そこで初めて意味があるんだと、
私は思うわけですよね。
確かに薄情な人を見たら
ひどいって思うかもしれない。
だからと言って…そんな急に
何でも出来るわけじゃない。
…友達にすらなれてないであろう
海藤の言葉で一生懸命に考えてる
のを見ただけでも、平介は言う程
薄情者でもないのかもって思うよ。
…もしかしたら平介は、薄情なん
じゃなくて愛情を人に向けるのが
苦手なだけなのかもしれないね。

平介…そうなんだよ。
目立っていい所があるとか
そういうことはないけれど、
別に悪いやつじゃないんだよ。
きっとそれはずっと関わってきた
鈴木や佐藤だから気づけたこと
だったりするのかもしれんけど。
人のいい所はきっと見えにくい。
ほんとに些細な事だったりするし。
でもそれに比べて悪い所は目立つ。
海藤は、先に悪い所に気付いて、
あんなふうに敵視してるから
余計にいい所に気付きにくく
なっちゃってるんだろうとも思う。
まったくの善人じゃない。
…逆に100%善人な人なんて
私は知らないし、逆に
近寄りがたいと思うがね。
人にはそれぞれ良い所もあれば
悪い所だってある…だからこそ
悪い所を否定するだけでなくて
良い所を認めていくことで人と
付き合っていけるんだと思うし。
…そうか、そうなんだよな~。

秋を落ち込ませてしまって、
海藤にはぼろくそ言われて、
母親にも地味に心をえぐられ…
秋の機嫌が直ってからも
ずっと海藤の言葉を引きずって
いた平介だったけれど、秋が
描いていた絵を見て、なんだか
少し心がすっきりした様子。
そうなんだよね、世間的に
正しいと言われることが全て
正解で、そうでないことは
全て間違いなんてことはない。
海藤の言うことは正論であって、
あくまで理想の形であって…
理想ってのは、その通りにする
のは結構難しいもんなんだよ。
悪くない…きっとそんな感じで
いいんだろうなって、思った。
~ひとこと~
そもそも思ったのは、平介と海藤は
とことん相性が悪いんだろうってこと。
情熱をぶつけてくる海藤と、それを
上手く吸収して答えを出すことが
苦手な平介だもの。どちらが悪い
とかではなく、ほんと相性が悪い。
まあ、どんなきっかけでもいいから
海藤が平介をもっと知って、いいとこ
とかにも気付けたらいいなと思うよ。
そもそも、羨ましいから妬ましい
なんて思ってる相手に付きまとう
理由が謎だし…海藤が平介のいい
所に気付けたら、それでわりと
満足するんじゃなかろうかと思う。
こんななのに自分には無いものを
たくさんもっているのがずるいと
感じてるんだもの、こんなだけでは
なく良いところもあるんだよってね。
さて…この先どう話が進むのか。